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戦狂のキキ  作者: shio
第四章
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「これは式術。万象を操る象術とは違い、『念』……といってしまうと少し難しいですね、『心』といったほうがいいかもしれません。動物や人、怪士あやかしの心を紙に宿らせ使役する。ただし、自らの心を込めることや混ぜることは禁じられています」

「何故ですか?」


 伊奈がそっと手を近づけると蝶はひらひらと舞い指へと止まった。それを横目で見つつ問いかけた志伊に、照灯はくすりと笑いながら、


「式が壊された場合、術者にその全ての反動が来ます。自身の念がこもっていれば、それは心が壊されるのと同じ。どういうことか分かりますね」

「でも、そんな危険な術なら、使わない方がいいのでは……」


『心が壊される』という言葉にびくりとする伊奈へ「その蝶は大丈夫ですよ」と微笑み、続けた志伊の問いに照灯は頷く。


「そうですね。確かに私達もあまり式術は使いませんが……ですが、それだけの力はあります。念というのは目に見えず形もないからこそ、強く深く底のないもの。邪念、怨念を式にすれば、鬼を使役することもできます。鬼によって鬼を調伏する、これは百年ほど前の陰陽師であれば当然でしたが、今は違います」

「今は?」

「ええ。邪念、怨念に接すれば接するほど、自身の内にも穢れが堪る。穢れが堪れば、やがて自身も鬼となる。なので、鬼を使うような式は禁術とされています」

「……何故」

「キキ?」


 静かな声に、照灯は顔を向ける。キキは真っ直ぐな瞳で見つめながら、言葉を続けた。


「何故、初めから神楽を使わなかったのですか?」

「ふふ、そうですね。確かに初めから神楽を、神楽だけを使えば良かった。けれど、神楽は誰にでも成せるものではありません。キキは、神楽舞の初めを覚えていますか?」

「はい、『きよめ』です」

「よく覚えていました。そうです、『清』です」


 にこと微笑み、


「『清歌』、キキ、続けての問いです」

「『心だに誠の道に適ひなば 祈らずとても神や守らん』」

「そうです、ふふ、良い子です」


 照灯は本当に楽しそうにキキを褒め、そして、瞳を閉じすっと姿勢を正す。


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