二
「聞けば……いえ、聞いたときは信じられませんでしたが、本当のようですね」
完全にはとれていない血の跡のついたキキの装束。戦いの後の証。
「あんな幼い子まで戦わせて……どういうおつもりなのですか? 陰陽師の方々もです」
「いや、志伊よ、あの子供は……」
「あの子供は、なんなのですか」
「あー……」
説明しようとして、礒猛は再び困ったように言葉を濁す。
それもそのはず。礒猛はキキの戦いを見ていない。鬼気持ちとは知っていても、本心ではまだ幼子としか見ていなかった。
自分も実際に見るまでは信じていなかった……須佐はふっと息をつく。
「その者は……」
つい半刻前の事を思い出す。
『……おい』
掛けられた声にキキは振り向いた。
『何故、鬼の誘いを断らなかった』
須佐の問いに、一瞬その場に居た皆に緊張が走る。
けれど、キキは変わらず、静かに。
『……付いていき、鬼の長を全て倒せば戦は終わると思いました』
そう答えた。
法螺でも、戯れでもない。恐れもない、かといって、勇ましくも無い。全くの自然。
――そして、倒せることを疑っていない。
『…………』
咲久夜達がキキを見つめ苦笑する中、須佐だけは視線を外し俯いた。
「――鬼子だ」
「鬼子……貴女が鬼気持ち」
志伊は再びキキを見つめた。子供とは聞いていたが、あまりにも幼く見える。そんな幼子が十数の鬼を一人で倒したなどと俄には信じられない。
だからだろう、志伊は尚言葉を次いだ。
「ですが、兄上。それでは理由にはなりません。鬼子とは言ってもその子はまだ幼い女の子。それに、兄上とて本当に鬼の子だと思っているわけではないでしょう」
「…………」
「……まさか、本当に鬼の子だと思っているのですか?」
応えない須佐に、志伊は驚き問いを重ねる。
(……助け船を出すわけでは無いが)
咲久夜は内で呟き、
「キキは二十体以上の鬼を倒した。それは真だ」
武家の話、兄妹の話と、口を挟まないようにとは思っていたが、二人のやり取りに口を開き続けた。




