四
――ほどなくして、遠くに点々とした明かりが見えてきた。
整った平和な世界に生きてきたキキならば当然なのだが……普通、何かしらの脅威があったなら、人々を大きな都市に避難させたほうがいい。守りやすく戦いやすいからだ。
けれど、この時代でそれができないのには理由があった。人が集まることの諸問題、食料や住む場所の問題など様々あるのは当然だが、一番の問題は古い考え方だった。住む土地を離れるという概念が薄く、他の土地の人間と共存することに抵抗がある。
だからといって、土地を離れない村々に完璧な防衛対策を作ることはできず……見張りさえ付ければ鬼に襲われる確率は大きく減るというのに、それすらもできていなかった。結果、こうして襲われる村が多い。
――そう、『もう襲われていた』。火が上っている家、近づくにつれて分かる焦げた匂いと、屍臭。そして、火に黒く写っている巨大な身体。
こっそり地図を見てきて良かった――キキは内心で呟いた。鬼が人間を求めているのは分かっている、つまり村を目指せば鬼に遭遇する確率が多くなるということだ。討伐の命は正確だったのだろう、目的の場所に確かに鬼は居た。
腰にある刀に触れる。一応、自分に合った武器、小さな身体でも扱いやすい小太刀は貰っていた。台所事情もあるため、粗悪品だが……どちらにしろ、鉄と同じくらい堅い鬼の皮膚には一本では足りない。村に落ちている鉈や鍬、最悪なら石も使わなければ鬼を全滅させることはできないだろう。
生まれ変わる前、斬鉄について調べたことがあった。結果、技術的にはよく分からなかったのだが、一つ分かったのは斬鉄というのは理論的に出来るということだった。後、もう一つ。鉄を斬るとなると摩擦がなんとか……つまり、鉄のように堅いだけで鉄ではない鬼の皮膚であれば、斬りやすいのではないか?
後は試してみないとどうにもならない、そう思い、薪割りで色々試してみた。何度か試していく内に分かったが、スパンと一太刀で斬るのに力は要らない。いや、力の入れ方に工夫が要る。
『斬るとき』に力が要るのだ。振りを速くしようと力を込めても上手くは斬れない。柄を絞るというが、振り下ろしの瞬間のぎゅっという握りが大切だと分かってきた。とはいえ、独学でやっているのだ。達人から見たら間違っているのかもしれないが……
ただ、教えてくれる者がいない以上、自分でどうにかするしかなかった。薪割りとはいえ、『斬る』ということに関しては人も薪も変わらぬはず。そう思い、キキは何度も薪で、そして、時折人目を盗んで木で試すようになっていった。




