一
「――そういえば」
それは、笠形山への帰路の途中、陣が見えてきたあたりで和可はふと気になり、隣に居た那都へと問いかけた。
「那都様、照灯様は神楽を成していましたが、須佐様はどうやって追いついたのですか。咲久夜様も戦いの直前に神楽をされていましたし」
陣からの移動と宇加との合流を考えても、神楽の力を纏っていなければ戦いに間に合わない距離だった。普通の人の速さでは、つまり須佐では追いつけないはずだった。
「ああ、それなら咲久夜様は照灯が抱えて、須佐殿は私が抱えた」
「えっ」
「急を要していたからな。迷っている暇も、問答もしている間もなかった」
「そうですか、須佐様を」
その光景を頭で思い浮かべ、和可は笑ってはいけないと思いつつも抑えることが出来ずくすりと微笑んでしまった。
「……秘してくれと重ねて言われているから、ここだけの話にしておいて」
「何故でしょう?」
「面目というのがあるんじゃない。女に抱えられて戦場に連れて行かれたとあっては将軍としての名が、とか」
「ふふ、成程」
「特に――」
「兄上っ!!」
「『あの二人』には知られたくないんじゃないかな」
声が聞こえ、那都は苦笑しつつ陣の方へと顔を向けた。
武家の兵と同じく蒼紺の着物を纏い、長い髪の少女は足早にこちらに近づき――そして、その後ろには礒猛が頭を掻きながら付いてきていた。
「兄上っ、どうして一人で行かれたのですかっ!」
「……志伊」
「何度もお話しているはずです、私も共に戦うと! どうして連れていってくださらないのですか!」
「すまないなぁ、若」
「いや、いい」
志伊と呼ばれた少女が更に声を上げる中、その後ろで申し訳なさそうに謝る礒猛に須佐は僅かに首を振る。
「志伊、話は後でする。戻っていろ」
「いいえ、兄上。今、話さなければならぬことです」
志伊もまた首を振り、そして、キキへと視線を向ける。




