二
「そういえば、キキには礼を言わねばならぬな……わしが戦う時にお前は手出しをしなかった」
「咲久夜様は約束を守ってくれませんでした」
「はは、そうむくれないでくれ。約束を守らなかったのは悪かった」
余程不満だったのか、キキには珍しく少しむくれている。もしくは、それだけキキとの距離が近くなったのか。
ただ、幼子がむくれているのは逆に可愛く写ってしまうものだ。
現に、
「……あの照灯様、和可様」
照灯と和可はキキの顔を見て、幸せそうに頬をつついていた。
「あーあ、いいなぁ」
「お主も混ざれば良かろう」
「あの二人が中に入れてくれないんですよ」
集めてきた薪を置き、那都は笑った。
「まあ、後で独り占めします」
「……私も」
「そうだな、宇加と二人占めしよう」
「まったく」
つくづく妙なる子だと思う。これだけ人を惹かれさせる。しかも、人だけでは無く鬼にまでも好かれる。
(まあ……人の皆ではないが)
木々の影へと視線を向ける。そこには、須佐がこちらから身体を背け一人座っていた。
キキに少しでも触れれば……心に触れれば鬼を弔うことも「成程、キキであれば」と納得するだろう。だが、須佐はキキを知ろうとせず、むしろ見下していた。
そのせいもあるだろう。キキの戦いを知り、キキに助けられ、感情が乱れていた。落ち込むのも無理からぬこと。
(けれど、これで京への進撃を留まってくれれば、今はそれで良いだろう)
咲久夜は内で呟いた。キキのことを知るのはゆるりで良かろう。
「……キキ?」
小さな呼び声が聞こえ、視線を向ける。
見ると、身体を洗われていたキキが照灯へと身体を預けていた。
「どうした、照灯」
「いえ……キキ、眠ってしまったようです」
「……そうか」
思わず笑い出しそうになり、けれど、その笑いを抑え咲久夜は小さく伝えた。
「無理もない、疲れたのだろう。今は寝かせてやろう」
「はい」
照灯は頷き、布で洗うのを止めそっとキキを抱きかかえた。




