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戦狂のキキ  作者: shio
第三章
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三十六


 女よりも先に術を施し、攻撃を潰す。それより他はない。


「――火遠理ほおり


 指を二本立て印を組み、口元に当て鋭く囁き、その力を顕す。

 焔の弓を手にし、炎矢えんやをつがえる――それは瞬きの事。

 が、


「ふ……」


 女は笑う。

 瞬間、轟音が響いた。


(っ!)


 咲久夜は炎矢を放つが、それは虚しく女の前で弾かれ。

 ――その時になって初めて気付く、自分と女の間に居た者がいない。


 ギィンッ!!


 朝になったかと見まがうほど、闇夜に白き閃光が満たされた。

 キキは飛び上がり、折れた小太刀で雷光を受け――そのまま宙で斬り払う。


「――――」


 四散する雷光を見つめ女は……そう、生まれて初めての事だ。

 呆然とした。


「ふふ……はははははっ! キキ、キキ、ああ、なんという可愛い子か!」


 先程一目見ただけ……それだけで雷光を刀で受け斬り払うとは。その発想は幼き子供故か、それとも純粋にキキの才か。

 一頻ひとしきり笑い続け、女はふっと息を吐くとキキを再び見つめた。


「キキ、もう一度言う。我の元に来やれ」


 ――バシュッ!!


 迫る炎矢は女の手の一振りで消える。


「……少し面倒のようだな。抱きしめてやりたいが、家族という者らがうるさそうだ。さりとて、殺せばお前と戦わねばならぬ」


 女は俯き、けれど、落胆の影なく……鬼にも関わらず愛おしむように優しく伝えた。


「今は人間に預け置こう。いずれ迎えに行く……妹子まいこよ、健やかにな」


 鬼が人間を案じる――それは信じられぬことではあったが。

 女はキキへ心から微笑み、そして、木々の中へ、闇の中へと姿を消した。


 静寂が戻った森に、キキは咲久夜達へと振り返り。


「……帰りましょう、咲久夜様」


 常と変わらぬその表情で、そう伝えた。


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