三十四
「ふふ、戯れにはよかろう」
――ガゥンッ!!
閃光と轟音。
白光が走った瞬間、衝撃が周囲を襲った。
「――――っ」
咲久夜は顔の前に腕を上げ、衝撃を受けながらも視線を鋭くする。
全てが吹き飛ばされた……火の粉の全てが。
何が起こったかは分かっていた。驚きもある、が、何よりその力に奥歯を噛みしめる。
「雷か……鬼が術を使うか」
「妙なことはなかろう。怪士は森羅とより近くに居る。陰陽師よりも余程近く」
だから、自分は陰陽師よりも強いというのか……
拳を握り……けれど、咲久夜はふぅと再び息を吐いた。
(父上や母上が敗れたのだ……わしが敵うはずなど)
そう、キキと話してから考えていたことだった。自分よりも強い敵が居ることは想像していたことだ。
恨みや怒りに我を忘れることはしない。それは嘆きや諦めではない。敵わないからこその戦いをしなければならない。勝つために……それを確認する。
「…………」
女は咲久夜の顔をどう見たのか。ただ、微笑んだ。
「咲久夜様っ!」
声が響き、照灯と那都、そして、須佐が木々から飛び出した。
「……わしに任せろと言ったはずだが」
視線は女に向けたまま、咲久夜は後ろにいる照灯達に向かって静かに口を開く。
「しかし……!」
「人間がわらわらと……」
尚、声を上げる照灯に女は煩わしいように呟きスッと手を上げた――が、
「…………」
いつの間に動いたのか、キキが女と咲久夜の間に立ち塞がった。
「……キキ」
「キキ」
咲久夜と女が、それぞれの内の想いと共に同じ名を呼んだ。咲久夜は重く、女は軽やかに。
「ふふ、我と対するか。だが、それは困る。我はお前を傷つけたくは無い」
血濡れの装束、血を浴びた肌、折れた小太刀を握りこちらを真っ直ぐに見つめる瞳。
幼子の姿だからこそか、より鮮やかで艶やかに見え――
「キキ……鬼を哀れみ弔う幼き子よ。参れ」
女は手を伸ばした。抱きしめ、胸の内に止め置きたい衝動に駆られる。
だが、
「……鬼を弔うだと……」
「…………」
再び出された口に、女は静かに視線を向けた。




