三十三
「――陰陽師か」
鬼人の女はつまらなそうに呟き、咲久夜へと視線を向ける。
「驚いた。言葉を喋り、人と変わらぬ鬼が居るとは」
呟き、咲久夜もまた女を見つめた。
知性があるだけではない。装束を纏い、紅まで刺し……それは、人と同じ感覚を持っているということ。だからこそ確信もする。この者が――いや、おそらく一人ではあるまい。『この者達』が父や母を殺した。
ふぅ、と息を吐く。恨みを持つことはない、だが、怒りは持つ。
「一つ聞く。京を滅ぼしたのはお前か」
瞳を朱に変え、咲久夜は再び口を開く。
「京の人間はどうした」
女はつまらなそうに……それは本当につまらなそうに。
応えたくもないように一拍の間を空け……けれど、キキの視線にも気付き、ふっと息を付く。
「半分は鬼が喰らった」
「――――」
刹那、炎が浮かび――だが、
「咲久夜様」
凜と透き通った声が響いた。
「戦うのはわたしです」
「…………キキ」
幼子の純粋な瞳に咲久夜は肩の力を抜いた。
「ふふ……さすが、我が妹子」
すでに我が物のような、そのような女の言葉。別にこちらを意識して言ったわけではない、それは分かっていた。だが、
「キキ、すまぬ」
キキまで奪われるわけにはいかぬ――キキが鬼人に付いていくことはないと分かっていても、咲久夜は自らの我を通した。
――家族を奪われるわけにはいかぬ。
「ほう……」
女はゆっくりと空を仰いだ。
再び火の粉が舞い落ちていた。雪のようにはらはらと深々と――
それは闇夜に更に輝き、瞬く。
「優雅なもの……けれど」
舞い落ちた火の粉に装束が焼け落ちた。このままじっと立っていれば火の雪を被り、全身を焼かれるだろう。
「この衣は気に入っている。焼かれるのは困る」
「殺しはせぬ。お前には話して貰わねばならぬことが数ある」
「何を言う陰陽師……いや、咲耶を纏う者よ。お前が言った通りだ、京を滅ぼしたのは誰か」
女は軽く手を上げ、微笑んだ。




