三十
――ィィン
それは舞うように、キキは身体を回転させ折れた小太刀を振り抜いた。剣線と共に血は弧を描き、そして、キキの後ろで鬼は声も無く倒れる。
ポタポタと全身から血が落ちていた。自分の血では無い。全て鬼の血。
人と同じく紅いのだな……何故、ふとそんなことを思ったのか、キキ自身にも分からない。けれど、命を纏っているのだな、と続けて思った。
血の化粧、命の纏い――キキは鬼兵へと視線を向けた。
「グゥゥゥゥ…………」
鬼兵は唸り、キキをその名の通りの鬼の形相で睨んでいた。喰らうと笑っていた顔はもうない
「赤子、赤子……! オ前ハ鬼子カ……ダガ、我ラ同胞ヲ殺シタ……オ前ヲ喰ラワネバ同胞ガ浮カバレヌ!」
キキは応えず――ただ、刀を構える。
「オォオォオオオオオオオオッッッ――――!!!!」
キィン!
上段から振り下ろされる太刀を捌き、二連、三連と続く斬撃を流していく。
「オァアアアアアアッッ!!」
裂帛の気と共に、再び上段の刀をキキへと打ち下ろし――けれど、刃はキキに届くことはなく。
振り下ろしの瞬間、キキは鬼の手首を薙いでいた。握りが緩み太刀が抜け、宙に浮いた。そして。
「――――」
キキは無言で、無心で、小太刀を捨て浮いた太刀を掴み一気に踏み込んだ。
顎下を貫く刃……だが。
「……ガァアアアアアッッ!!!」
鬼兵は尚腕を上げ、キキへと爪を振り下ろした――けれど、その爪もまた届くことはなく。
――ポタ、ポタ
血の滴がキキの頬を伝っていく。血の涙のようにそれは流れ、地へと落ちた。
太刀が首を貫いていた。だらりと腕が垂れ、鬼の身体からは力が抜けていく。
ザッ――
キキは身体の向きを変え、そのまま素早く太刀を抜く。
支えがなくなったように身体が揺れ、鬼はキキの後ろで倒れ伏した。




