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戦狂のキキ  作者: shio
第三章
60/461

三十


 ――ィィン


 それは舞うように、キキは身体を回転させ折れた小太刀を振り抜いた。剣線と共に血は弧を描き、そして、キキの後ろで鬼は声も無く倒れる。


 ポタポタと全身から血が落ちていた。自分の血では無い。全て鬼の血。

 人と同じく紅いのだな……何故、ふとそんなことを思ったのか、キキ自身にも分からない。けれど、命を纏っているのだな、と続けて思った。

 血の化粧、命の纏い――キキは鬼兵へと視線を向けた。


「グゥゥゥゥ…………」


 鬼兵は唸り、キキをその名の通りの鬼の形相で睨んでいた。喰らうと笑っていた顔はもうない


「赤子、赤子……! オ前ハ鬼子カ……ダガ、我ラ同胞ヲ殺シタ……オ前ヲ喰ラワネバ同胞ガ浮カバレヌ!」


 キキは応えず――ただ、刀を構える。


「オォオォオオオオオオオオッッッ――――!!!!」


 キィン!


 上段から振り下ろされる太刀を捌き、二連、三連と続く斬撃を流していく。


「オァアアアアアアッッ!!」


 裂帛の気と共に、再び上段の刀をキキへと打ち下ろし――けれど、刃はキキに届くことはなく。

 振り下ろしの瞬間、キキは鬼の手首を薙いでいた。握りが緩み太刀が抜け、宙に浮いた。そして。


「――――」


 キキは無言で、無心で、小太刀を捨て浮いた太刀を掴み一気に踏み込んだ。

 顎下を貫く刃……だが。


「……ガァアアアアアッッ!!!」


 鬼兵は尚腕を上げ、キキへと爪を振り下ろした――けれど、その爪もまた届くことはなく。


 ――ポタ、ポタ


 血の滴がキキの頬を伝っていく。血の涙のようにそれは流れ、地へと落ちた。

 太刀が首を貫いていた。だらりと腕が垂れ、鬼の身体からは力が抜けていく。


 ザッ――


 キキは身体の向きを変え、そのまま素早く太刀を抜く。

 支えがなくなったように身体が揺れ、鬼はキキの後ろで倒れ伏した。


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