三
出立が夕方なのは鬼の行動が活発になるのが夜だからだ。目的の場所には朝に着く。つまり、鬼が休んでいる朝に襲撃するという作戦だろう。
皆足軽の姿だった。だが、大人達が胴や草摺、小手や臑当を付けている中、キキに合う鎧はなく紺の着物の姿のまま出発した。当然で、キキのような小さな女の子用の鎧などはない。
けれど、キキはそれでいいと思っていた。
(鬼の攻撃は斬るというより潰す攻撃……鎧なんて意味が無い)
そうと分かって……いや、分かっていないかもしれないが、ともあれ鎧を着るのは安心の為だろう。心の安心。守られているという安心。
それで怯えがなくなるのなら、鎧には意味がある。
(……いや、本当は意味はないけど)
キキは自分の中ですぐに否定した。
鬼の攻撃を防げないのなら、避けるしかない。鎧を外して身軽なほうがいいに決まっている。
鎧でガシャガシャと音が響く中、キキは一番後ろを歩いていた。鎧を着ていない小さな女の子を元より戦わせる気は無いのだろう。居ない者のように、こちらには気にも止めていない。
ガシャガシャガシャ――――
そうして、まるで最初から居なかった者のように、キキの姿は消えた。
――ザザザザザッ――
キキは森の中を走って行く。兵士達は普通に道を歩いて行くため、こうして山を越えていけばかなり早く着くはずだった。
早く着くことを目的とせず、兵士達が安全な道を行くのは体力を温存させるためだ。鬼に奇襲は意味が無い。恐怖することも驚くこともないからだ。
だが、今回はそれで助かった。こうして楽に先行することができる。
斜面がきつくなるにつれて、キキは木の枝に飛び移った。枝と枝を飛び移り、山を飛び抜けていく。




