二十五
「グゥゥゥゥ……」
――だが、鬼の動きが止まっていた。様子を見るように、仲間を待つように遠巻きにキキへと唸りを上げている。
ふっ、と息を吐く。
(ここで様子見なんて……)
折角、斬る流れが出来てきたというのに間を外された――いや。
(恐れられている)
間を外されたわけじゃない。より獣に近いからこそ、本能で恐怖を持ったのだろう。
(……それじゃあ、戦いにならない)
怖がっている相手を斬るわけにはいかない。キキは悲しく心で呟き、刃を下ろした。
――刹那、
「キキッ!!」
ギキィンッッ!!
声に反応し、キキは迫る刃に小太刀を振り抜き捌いた。
「ハッハァ!!」
くぐもった笑い声を上げながら、刀、いや、大太刀を振り回しキキへと叩きつける。およそそれは斬るという行為ではなかったが、尋常じゃない力のせいか捌いていてもキキの小さき身体では小太刀ごとすぐに真二つにされそうなほどだった。
ギィンッ!!
大太刀を流し、キキは刃を踏み込み地に止めた。無論、そんなことで止められるはずがなかったが、払うように大太刀を振り上げる力を利用してキキは大きく飛び退く。
「ハッハァ! 赤子ジャ、赤子ジャ! 活キノイイ、赤子ジャッ!!」
喜び声を上げる鬼――言葉を話し、鎧を纏い、刀を振るう大鬼。それは驚くべき事であったが……
(……成程、身体が大きく力が強いということは、足も強いということ)
森の中から一足飛びでこちらに斬りかかることもできる――キキは鬼の姿を気にすることなく内でそんなことを考えていた。
「シカモ、逃ゲタト思ッテイタモウ一匹マデ居ル! 馳走ジャ、馳走ジャ! マルゴト喰ッテヤロウゾ!!」
大鬼の言葉に従ったのか……そして、それは主従の関係があるということでもあったが、他の鬼達が一斉に和可へと動き始めた。
「赤子、オ前ノ相手ハ我ジャ――」
哄笑したまま大鬼は刀を振り上げ――けれど、その時にはすでにキキの姿はなく。
「ア?」
首を振り見渡す視界の隅で、一体の鬼の首から血が噴き出した。




