二
(……勝てるだろうか)
戦支度を整えている大人達を見ながら、キキはぼんやりとそう思った。誰もキキのことなど気にしてはいない。討伐前だから……というわけではない。キキは常に一人だった。いや、元より仲良くしようなどとは相手も……自分も思っていないのだが。
それはともかく、兵士の数は自分を入れて三十人ほど……部隊の総人数でもある。けれど、鬼二体、三体なら倒せるかもしれないが、四体なら運が良ければ、五体ならば勝つのは難しいだろう。
討伐の詳細は聞いていないが、果たしてどうだろうか……鬼の正確な数は分かっていない。おそらく、それを調べることも任務の一つなのだろう。だが、討伐が命じられたということは鬼がいることは確実のはず。そして、総人数で出立ということは、鬼の数は多いと考えた方がいい。
(果たして……)
……自分一人なら確実に勝てる、とキキは思っていた。自信があるわけでも過信しているわけでもない。ただ、確実に殺す方法をとるだけだ。
しかし、周りの大人達はどうだろうかと思う。
(聞いて答えてくれるか?)
自分で疑問に思いつつも、キキは隊長へと近づき質問した。
「あの……作戦は」
「作戦?」
案の定、隊長の男……名は確か居倉橋だったか、その男は眉をひそめてこちらを見下ろした。
――「ああ、やっぱり」と内心で笑う。子供が作戦を聞いてくるなんて、という顔だ。しかも、自分は小さな女の子。兵士だと思っている男達に、対等な扱いを望むほうが無理な話だった。
「お前は後方だ。後ろにいろ」
「分かりました。では、どう攻めるのですか?」
「ちっ」
あからさまに舌打ちをする。子供の前なんだから我慢すればいいのに、と思うが、苛々させているのは自分か、とも思う。苛々すると分かっていて質問しているのだから、悪いのは自分だろう。
とはいえ、ここまでで大方の予想はできていた。
「鬼の場所を見つけ次第、襲撃する」
「……なるほど」
予想通りの答えを聞いて、キキは「ありがとうございます」と笑った。果たして自分のこの笑顔は相手にどう写っているのだろうかと頭の隅でよぎったが……
「ああ、分かったのならいい」
気持ち悪く思ったのか、話はもう終わりというように隊長の男はそれだけを言って顔を逸らした。子供の笑顔というのはこういう時便利だ。嘲笑でも無邪気な笑顔と捉えられてしまう。
ともあれ、作戦ともいえないが、どうするのかは分かった。
(助ける義理はないけれど……)
自分は英雄でも正義の味方でもない。でも、死人がでないことはいいことだろう。
時間との勝負になってしまうが、まあ、それはそれで面白い。




