十八
「――ガァアアアアァアアッ!!」
鬼は叫びキキに再び飛びかかった。その内に鬼は二体、三体となり――
ザァァァァァ――――
激しい葉の音が響く中、キキはひらりひらりと宙を舞う花弁のように木々を飛び渡り。
――タンッ
何本目かも分からない木が倒れたと同時に大きく飛び上がり、鬼の頭上から首に向かって小太刀を振り下ろした。
「――――」
手応えの違和感は気にせず、そのまま駆け出し一閃、二閃とこちらへと向かってくる鬼の首を斬り払った。
ザザッと地を滑り身体を回転させて止まらせ、通り過ぎた鬼へと視線を上げた。
鬼が木を倒してくれたお陰で視界が開け動きやすくなった――けれど。
(硬い――)
斬り方を間違えたか――否、自身の技を過信しているわけではないが感覚は同じだった。間違えてはいないはずだ。
では、鬼が強くなったのか――いや、そうも感じない。
(……成程)
こちらへと振り返り唸る鬼を見てキキは内で頷いた。一回り大きく見える鬼……成程、鬼が強くなった、というのは当たりではないが間違いではない。
今まで自分が鬼を倒してきたのは――殺してきたのは全て不意打ちだった。死角から急所への一撃、それで全て殺してきた。
和可と宇加を追っていた鬼も獲物を狙っていただけ、戦うという意識はなかったはずだ。だが、今は違う。鬼は戦う気を持っている。身体に気を入れているのだ。
(それで、益々身体が硬くなった)
今まで通りではいけない。もう一段、二段――いや、もっともっと強くならないといけない。技を磨かないといけない。
「――ははっ」
キキは無意識に笑っていた。
成程、面白い。如何にすれば一太刀で斬れるか。仕留められるか。
しかも、実戦で学べる。更に、少しも傷つけられてはならない。
こんなに面白いことがあろうか。
「――――」
キキの微笑みをどう見たのか――何故か鬼が唸りを止め、一歩退く。
「……逃げないで」
まるで愛しい人を呼ぶようにキキは口を開いた。
「殺しに来て、鬼さん」




