十六
紙のように千切れる木々……けれど、それは少女を止めるには十分な大きさ。
「――――」
風を再び放とうとも間に合わず、和可は迫る木々に身体を捻り。
だけれど、それでも避けること叶わず……
「和可っ!!」
宇加が絶叫した。避けることができなかった木にぶつかり、和可が転がり倒れる。
急いで近づき――だが、
「大丈夫!」
顔をしかめながら、和可は叫んだ。
「宇加、行ってっ!!」
それが、どういう意味なのか――宇加はもちろん分からないはずがなかった。
けれど、だからこそ。
「…………」
宇加は和可を護るように立ち、そして、すぐに風を放つ。
目眩ましでどれだけ怯んでくれるか分からないが、それでも少しでも時を稼げれば良かった。
助けが来てくれることを信じているわけではない。元より、自分達が報告に行かなければ鬼の居場所は分からない。
ただ、少しでも和可と一緒の時がほしかった。少しでも二人で一緒に居たかった。
「宇加っ!!」
和可がもう一度叫ぶ。その叫びが何を伝えているのかも宇加は十分に分かっている。
けれど、それでも――
「グォォオオオオオオオッッ!!!」
邪魔な風に苛立つように鬼が叫び、腕を振り上げた。
鬼を睨み、宇加は無意味だと分かっていても腕を薙いだ。
だが、荒ぶ風は振り下ろす鬼の腕を止めること叶わず――
サァァァァ――――
そして、風が鳴いた。
「――――」
目の前で噴き出す血に和可は声を出せず。
そして、同じように声も出せず血を噴き出したままその者はゆっくりと前へと倒れる。
――首を深く斬られた鬼は、絶叫することもなく絶命した。
一閃――小さな幼子は鬼が死んだことも確認せず、暗い森の中へと姿を消す。
「……キキ」
未だ何が起こったのか理解できず呆然と立っている宇加の無事を喜ぶことも忘れ、和可は消えた幼子の名をただ呟いた。




