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戦狂のキキ  作者: shio
第三章
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十四


 ここまで鬼に近づくのは初めての事。本来なら数と位置だけを把握すればいい、鬼に近接する必要はなかった。


「――――ゥゥゥ――――」


 微かに鬼の唸り声が聴こえ、和可は息を止めた。


「――グゥゥゥ――」


 鬼は集まって唸りを上げているだけ。話しているようには見えないが、もしかしたら、これが鬼の言葉で何か通じ合っているのかもしれない。

 距離は三丈さんじょうほど、これ以上は危険だ。それに、鬼の考えが分からないのなら、近づく意味もない。


(……でも)


 一瞬の逡巡の後、和可は屈んだまま一歩踏み出した。

 未だ何も分かっていない。ここまで近づいたのなら、鬼の姿を確認してから――


「ハァハッ」


 鬼の笑い声と、ガチャという何かの音――その刹那。


「――――!」


 身体を掴まれ、和可は息を止めたまま――声を上げられないまま振り向いた。


「――和可、近づきすぎ」

「……………宇加」


 ようやくにして吐いた息と共に肩を掴んだ相手の名を呼ぶ。


「脅かさないで、宇加」

「それはこっちの言葉。こんなに鬼に近づくなんて……」


 小声で叱ってくる宇加に、とりあえずほぅと大きく息を付き。


「危ないのは分かってる。でも、宇加も見てるでしょう、鬼が何もせずに立ち止まっているなんておかしい」

「確かに変だけど……でも、これ以上は駄目。鬼に見つかる」


 反論する和可に鋭く視線を向け、宇加は強く続ける。


「それに、動かないのなら都合がいい。早く咲久夜様達に報告しないと」

「そうかもしれないけれど……」

「見つかる前に動こう」

「――鬼が笑ってたの」


 早速動き出そうとする宇加のその背に、和可は一言呟いた。


「……どういうこと?」

「鬼が笑ってたの。喜んで雄叫びを上げる姿は見たことあるけど……笑い声を聴いたのは初めて。それに」


 ガチャという音、あれは聴き慣れた音だった。あの音はおそらく……


「グォォォオオオオオオッッッッ!!!」


 瞬間、雄叫びが闇夜に響き渡った。 


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