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戦狂のキキ  作者: shio
第三章
42/461

十二


 ――ザザザザザッ


 志那都比売神シナツヒメノカミ――


 風の神、その風を身に纏わせ常人ならぬ動きで森を駆け抜けていく。


(けれど)


 和可は内で呟いた。

 未だ未熟な為、自分も、そして、宇加も完全な神降ろしができておらず、その力の一旦しか纏えていない。

 今は風の力を借り、身を軽くすることしかできない――だから、戦うことなどできるはずもない。

 元より、咲久夜が自分達に武具を与えないのは戦わせない為だ。戦ってはならない、戦う事を考えてはならない。そう戒められている。


(でも……陰陽師ならば)


 当然、術者の器の違いはあれど、戦えないなどということは――陰陽師が鬼を祓えないなどあってはならない。


 ――私達はいつか陰陽師に成れていた。


 宇加の言葉が浮かぶ。


(けれど)


 再度、思う。

 戦えないから……キキのような幼子を一人戦わせなければならない。

 それは、キキ自らが決めたことは知っている。その意思を否定することもしたくない。けれど、自分達が戦えたならば……


(私が戦えたなら、キキを一人で戦わせたりしない)


 ――だからこそ、


(鬼の数と位置をちゃんと把握しないと)


 キキの為に。戦えない自分ができる精一杯なこと。


「……和可、急ぎすぎ」


 森を駆け抜けながら近づき、そう伝えてくる宇加に和可は速さは緩めないまま視線も向けず。


「でも、なるべく早く見つけないと」


 それだけ、小さく呟いた。


「余計な事考えすぎ」

「…………」

「『戦う事を考えるな』……咲久夜様の言葉、忘れてないよね」

「分かってる」

「分かってなさそうだから言ってる」

「…………」


 一瞬だけ宇加に視線を向け、


「……別れて探そう。『いつも通りに』」


 伝え、すぐに駆ける速さを増し左へと和可は向かった。


「『いつも通り』じゃないから言ってるのに……」


 宇加は立ち止まり、和可の消えた方へと顔を向ける。

 本来ならば、和可の言う通り別れて探すのだが……不安がある。

 斥候とはいえ、戦いはもう始まっている。鬼を見つけるめいを受けた以上、それは絶対。


 けれど……


「…………」


 宇加は駆け出した――和可が向かった先へと。

 自分達を戦わせないのは死なせない為だ。生きること、それは何より一番大事な役目。

 それは絶対に護らなければならない。


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