十二
――ザザザザザッ
志那都比売神――
風の神、その風を身に纏わせ常人ならぬ動きで森を駆け抜けていく。
(けれど)
和可は内で呟いた。
未だ未熟な為、自分も、そして、宇加も完全な神降ろしができておらず、その力の一旦しか纏えていない。
今は風の力を借り、身を軽くすることしかできない――だから、戦うことなどできるはずもない。
元より、咲久夜が自分達に武具を与えないのは戦わせない為だ。戦ってはならない、戦う事を考えてはならない。そう戒められている。
(でも……陰陽師ならば)
当然、術者の器の違いはあれど、戦えないなどということは――陰陽師が鬼を祓えないなどあってはならない。
――私達はいつか陰陽師に成れていた。
宇加の言葉が浮かぶ。
(けれど)
再度、思う。
戦えないから……キキのような幼子を一人戦わせなければならない。
それは、キキ自らが決めたことは知っている。その意思を否定することもしたくない。けれど、自分達が戦えたならば……
(私が戦えたなら、キキを一人で戦わせたりしない)
――だからこそ、
(鬼の数と位置をちゃんと把握しないと)
キキの為に。戦えない自分ができる精一杯なこと。
「……和可、急ぎすぎ」
森を駆け抜けながら近づき、そう伝えてくる宇加に和可は速さは緩めないまま視線も向けず。
「でも、なるべく早く見つけないと」
それだけ、小さく呟いた。
「余計な事考えすぎ」
「…………」
「『戦う事を考えるな』……咲久夜様の言葉、忘れてないよね」
「分かってる」
「分かってなさそうだから言ってる」
「…………」
一瞬だけ宇加に視線を向け、
「……別れて探そう。『いつも通りに』」
伝え、すぐに駆ける速さを増し左へと和可は向かった。
「『いつも通り』じゃないから言ってるのに……」
宇加は立ち止まり、和可の消えた方へと顔を向ける。
本来ならば、和可の言う通り別れて探すのだが……不安がある。
斥候とはいえ、戦いはもう始まっている。鬼を見つける命を受けた以上、それは絶対。
けれど……
「…………」
宇加は駆け出した――和可が向かった先へと。
自分達を戦わせないのは死なせない為だ。生きること、それは何より一番大事な役目。
それは絶対に護らなければならない。




