十
これで人数は揃った。
咲久夜、照灯、那都、和可、宇加、須佐――そして、キキ。
(十六の討伐と考えるなら些か不足だが……まあ、『鬼がもっといること』を期待しよう)
と、そんなことをふと思い――
「……そういえば」
「咲久夜様?」
「いやなに、久々の戦だと思ってな」
不思議そうに問う照灯に咲久夜は笑った。
自身が好戦的だとは思っていなかったが、これではキキを諫められない。
「さあ、始めようか――和可、宇加」
「はい」
――チリン
静かに鈴が鳴った。
二人の少女、和可と宇加は袖を揺らし前へと進み出る。
すっと手を上げる――そこには何時つけたものか、手首に紅い紐が巻かれ、そして、垂れた糸の先には小さな鈴がついていた。
「……あれは、天鈿女命が鈴。神霊を降ろす神具、神を慰め迎える神楽舞の鈴です」
見つめるキキの横に立ち、照灯は優しく教えるように口を開く。
「神楽舞を見るのは初めてでしょう、キキ」
「はい」
「舞鈴は神楽舞のためだけにある清められた鈴。不思議なことに神楽の時だけにしか鈴は鳴りません」
照灯はそこでくすりと笑い、
「実は私達も何故神楽の時だけ鈴が鳴るのかは分からないのです」
「そうなのですね」
キキも笑い、再び二人の少女へと顔を向けた。
――心だに誠の道に適ひなば 祈らずとても神や守らん
パン――と二人は胸の前で両手を合わせる。
「あれは『清』。己の心に問い、心身を整えるものです。己の内に、心に、生き方に穢れがあれば清は出来ず、神楽も始めることは出来ません――そして、『迎』」
――千早ふる玉の御簾巻き上げて 神楽の声を聞くぞ嬉しき
リンリン――と鈴が鳴り、そして、少女は紅白の装束を纏い揺らし靡かせ。
「次が『帳』」
――幣たつる ここも高天の原なれば 集まりたまえ四方の神たち
僅かに瞼を閉じ、淡く微笑み、頬には朱が差し――少女二人は月の閃光に照らされながら舞い踊る。
「舞い終わり、『結』」
――千早ふる荒ぶるものを拂わんと 出で立ちませる神ぞ貴き
リン――一際大きく鈴が鳴った。
――出で立ちませる神ぞ貴き
少女二人の踊りが終わる。浮いた袖がゆっくりと下に降り――
二人は静かに顔を上げ、瞳を開き――静かにその御名を、言の葉を紡いだ。
――志那都比売神
―――― ィィィン ――――
鈴が鳴り響き――そして、音が止まった。




