七
「今回の戦い、キキが一人で鬼を討つ」
眼光鋭く須佐はキキへと視線を向けた。それは、怒りだけではなく憎しみや殺意も籠もったものではあったが……けれど、キキは何も変わらず。
だからか、咲久夜へと顔を向け、須佐は低く唸った。
「……何を言うかと思えば、幼子を一人で戦わせるとは、お前達も棒打ちした我らと一緒ではないか」
「どうしてもという頼みでな、幼子の願いは叶えてやらねばならん。それに、約束もしてある」
「約束だと?」
「ああ、少しでも傷をつけられれば戦うのを止めさせる」
「…………」
――少し約束が違う。そのことにキキは不満の視線を向けるが、咲久夜はわざと気にせず続けた。
「だが、キキは無傷で倒すと言っている。ならば、それを信じ任せるまでだ」
「なんだと……」
「須佐殿は先程言ったな、無傷ではいられない、と。だが、キキはそれを成せるそうだ」
それを聞き……須佐は笑った。
「幼子の法螺に付き合う気はない。それとも陰陽の術で誤魔化すか」
誤魔化す――魔に化かされ誤らせる。それは神に通ずる陰陽道を馬鹿にしたものだったが、咲久夜もまた(魔に成り化かすのも悪くない)と笑う。
「さてな。自身の目で確かめれば良かろう」
戦いの前に笑うことができるとは――今までそんなことはなかった。常に勝てるか、勝てないか。鬼を殺すか、鬼に殺されるか。そればかりを考えていた。
けれど、今はそれはない。笑う余裕がある。余裕ができたからこそ、武家を、須佐を諫めようとした。そして、それは紛れもなくキキに出会ったからだった。
(キキの姿に唆されたか)
さてはて、キキは諸天童子か……もしくは魔の眷属か。
怒るでもなく笑う咲久夜を訝しく須佐が見つめる中、
「さあ、参ろうか」
物見遊山にでも出かけるように、咲久夜は気軽に歩き出し屋敷の戸を開けた。




