五
「すまんな、須佐殿」
「それで、何体出た?」
「十六だ」
慣れたことなのだろう、屋敷に入るやいなや挨拶もなく問う須佐に咲久夜は答えた。
「十六か……三隊は必要だな。礒猛、射楯」
評定の時とは違い、武家の人間は須佐を含め三人しかいない。後ろに控える男二人、副将でもある礒猛、射楯に須佐はすぐに命じる。
「支度を急がせろ」
「は」
「その必要はない」
話は終わりと早々に戦準備に行こうとした須佐を止め、咲久夜は笑った。
「変わらずせっかちだな。話は終わっていないというのに」
「話す必要こそないだろう。鬼を野放しにするつもりか?」
「鬼は討つ。だが、今回は我らに任せてもらおう」
「……ほう、珍しいこともある。自ら名乗り出るとは」
「こちらの話も聞かず、そちらが勇んで出て行くので今までは黙っていただけだ」
咲久夜はもう一度笑い……けれど、すぐに表情を変えると静かに、けれど、重く一言呟いた。
「折角の機会だ、のう、須佐殿」
呼びかけには応えず、須佐は視線だけを向ける。
「陰陽師を見下す為、そして、鬼に復讐したいが為、武家の者だけで戦おうとするのはいい加減止めよ」
「…………」
「京に近づけば鬼が増えるのは道理。ここに陣をしくまでは鬼の数も少なく武家の者だけでもなんとかできていたが、最近はどうだ。どれだけの死人が出た?」
「……無傷ではいかないことは分かっている。だが、現にこうして我らは勝ってきている」
「勝ってきている? 先の戦いはどうだ、キキがいなければ全滅していた。今出そうといった三隊分はすでになく、さらに被害が出ていただろう」




