四
「……キキ、考えは変わりませんか?」
言っても無駄だと知りつつも、そう伝えた。
「照灯様……申し訳ありません」
「…………」
照灯はほぅと息を付く。実を言えば、キキが一人で戦うことを咲久夜が許してから照灯と、そして、那都はずっと反対を続けていた。
けれど、咲久夜も、キキも考えは変わらず……とうとうこうして武家との話し合いまで来てしまった。
このままキキを抱き、どこかへ逃げてしまいたい――そんなことすら照灯の頭によぎってしまう。キキがいなくなったとしても、十六の鬼。たとえ、少し数が増えたとしても咲久夜と武家の者達が鬼を倒してくれるだろう。それが分かってるからこそ、照灯の心にはますます不安や心配が募っていた。
「照灯様」
――そして、そんな照灯の心が分かっているからこそ、
「わたしは戦う為に生まれました。戦わなければ生きる意味がありません」
強い意志を持ってキキは伝えた。
「……まったく、貴女は」
照灯はキキを強く抱き寄せた。
「しょうがない子です……帰ってきたら、たんと叱りますから」
「…………ごめんなさい」
――本当に困ってしまう。照灯の温もりに包まれながらもキキは内で囁いた。
キキだけが分かっている。十数の鬼、いや、たとえ百の鬼だったとしてもキキは負けるつもりも死ぬつもりもなかった。過信ではなく、その確信がある。
だからこそ、こうして死地へと赴くような周りの反応は、有り難く嬉しくも、やはり困ってしまう。
そして、だからこそ。
力を見せねばならなかった。自分の力、戦える力を。
「須佐殿ももうしばらくすれば屋敷へと来るはずです。私達も参りましょう」
「はい」
身体を離し伝える照灯にキキは頷く。
月が明るい。時は亥の刻。
鬼と戦うのは子の刻になるか、丑の刻か……もっとも鬼が盛んになる時となる。
月の蒼い光を瞳に宿し、照灯の後にキキは続いた。




