三
「お前が行くのは、お前が生前に生きた場所と似て非なる場所……お前が望んだ時代の場所だ」
「それは、有り難いです」
「過酷な乱世の場所でもか」
「貴女が言った通り、わたしの望む場所です」
「分かった……では、一つ力を与えよう。お前は何を望む」
「心が読めるのなら、もう分かっているのでしょう?」
今度はキキが笑った。今更だが、こちらの心が読めるというのなら、この問答は不要だろう。
とはいえ、確かにお互いに黙ったままというのもおかしなものだとも思い直し、キキは自分の望みを伝えた。
「力をください。自由に戦える力を。でも、最強の力をくださいと言っているわけじゃない。わたしが思うように戦える力、強くなれる力……それがほしい」
「最強の力を与え、周りから英雄と崇められる人生を送ることもできる。それでもか」
「英雄などになりたくありません。周りから好かれ崇められるだけでも寒気がする。それに……そういうわたしだから、貴女は選んだのでしょう?」
「……ああ、そうだったな」
女性は手を軽く上げた。キキを抱くように招き、そして、その額にそっと掌を当てる。
「では、お前の望む戦える力を与えよう。お前は自分の思うとおりに身体が使え、その力を引き出す事が出来る。だが、それは人間の枠を超えない。人間以上の力を引き出すことはできない」
「ありがとうございます」
「……送る前に一つだけ言っておく。常ならば他の者につけている加護をお前にはつけない。それは、使命果たすまで死なない加護だ。それを付けることをしない。お前は判断を誤れば死ぬことになる」
キキの想いを悟ってのことなのか、付け加えられたその言葉にキキは笑った。
「ありがとうございます。自分の意思で死ぬことができる。それこそ、最高の幸せでしょう」
心の底から微笑み……そして、キキは眠るように瞳を閉じた。
「――来世の役割を果たすため現世で過酷な運命を課し、そうして、乱世へと送り出す。我々を恨んでも良かろうに――」
だが、少女は「最高の幸せ」と微笑み、そして、「ありがとう」と礼を言った。
女性は悲しく微笑む……少女の温もりが残っている掌をぎゅっと握り。
そして、せめてせめて――と何かを祈った。自身を否定することと知りながら、それでも、少女に向かって祈り続けた。




