十三
「そうだな、わしは武家とは違う。お前を一人で行かせるような真似はしない」
「お気持ちは有り難いですが……失礼をお許しください」
キキは僅かに瞼を閉じ、そして、顔を上げると共に燐と瞳に光宿し、声を発した。
「力を示さねば、誰もわたしの言葉など聞かぬでしょう。まして、このまま花知流様にお会いすれば、必ず何かの摩擦が生じます」
キキはなお言葉を次ぐ。
「咲久夜様がわたしを用いてくださるのなら、尚更。咲久夜様や、皆様にご迷惑がかかるような存在にはなりたくありません」
「だが、一人で……」
キキが戯れで言っていないことはその性格からも分かっている。嘘偽りなく思っているのだ、一人で十六の鬼を倒せると。
けれど、だからこそ不安にもなる。キキが殺されるかもしれない不安と……キキが本当に鬼を殺してしまう不安が。
(幼子を一人で戦いに向かわせ、どちらの結果になったとしても……)
心に重みが加わる。そのことに不安……そう、咲久夜自身も珍しいと思うほど不安が募っていた。
(不安など感じていてもどうにもならぬと常から思っていたはずだったが……キキは本当に言葉を発する時は鋭くなり過ぎるな)
愛らしい顔でこちらの心に言葉を突き立ててくる。思わず内で苦笑するが、さて、どうしたものかとも咲久夜は思案した。
「――やはり、許すわけにはいかぬ」
「咲久夜様……」
「そんな目で見るな。お前の初めての我が儘だ、聞いてやりたいが……お前よりも年長の者として、そして、家族として可愛い子を危険にさらしたくない」
「わたしは戦えます。犠牲を出さないためにも、戦える者が戦うべきです」
「それで、お前が犠牲になることはない」
「犠牲とは思っていません。戦いは……」
キキは一瞬考え……自身の心をそのまま言い表した。
「戦いは、わたしの生活です」




