十一
「……勝てぬことが分からないほど、それほど須佐様は愚かですか?」
「ふはっ、本当にお前ははっきりと物を言うな」
咲久夜は思わず噴き出し笑った。
「そうさな、愚かといえば愚かだが、愚かではない。才はある、実力もある……が」
――とはいえ、愚かなのはわしもだったろうが、とそれは心だけで呟く。
自身の心に恨みがあると悟った今だから分かる。須佐は京奪還というより恨みを……復讐をしたいだけだろう。勝つ勝たないの問題ではない、ただ京の鬼を殺したいだけだ。
「須佐殿はな先の鎮守府将軍の子だ。天守様の命により役を継ぎ、今は須佐殿が将軍なのだが……本人はまだ納得していないようでな。しっかり将軍の勤めを果たさねばならぬというのに、親が偉大過ぎると言うのも苦労がいる」
「それは、咲久夜様も?」
「……言葉を放つ時は、お前は刀のようだな。鋭すぎる」
「過ぎた言葉でした、申し訳ありません」
「いや、良い。自由にしろと言ったのはわしだ。それに、怒っているわけではない」
鋭すぎる言葉の刃……それは、キキの純粋さ故か、そうも思う。大人の接し方は悟っているというのに、心は真白き赤子のまま。
(――そして)
鬼狩る鬼気持ちと呼ばれるほどの力を持つ。だからこそ、どこか哀れにも感じ、照灯のようについ過保護にもなってしまうのだろう。
「母上ならば、お前とどう接しただろうな」
「咲久夜様?」
「親が偉大過ぎると困るという話だよ」
笑い……だけれど、これ以上母のことを考えるのは止めようと心で首を振った。思えば、須佐と自分は同じ立場だ。復讐という気持ちもよく分かる。
だからこそ、今は母のことを考えないようにした。母のことを想えば否応なく生まれる心の闇。母ならば……復讐という気持ちでキキに接したりはしないだろう。
「話を戻そう。口で武家の連中に釘を刺すだけでは足らぬだろうな。さて、どうしたものか……」
訪れる一時の静寂――その時、不意に外で一陣の風が静かに鳴った。
「照灯」
「はい」
咲久夜に応じ、照灯はスッと外への戸を開けた。
少し冷たい風が入り、夜の闇にぼんやりと四角い明かりが宿る。そこに二つの影が座り控えていた。
「和可、宇加」
「失礼いたします、咲久夜様」
二人の内の一人――よく見れば二人ともまだ少女だった。その一人、和可が応え、咲久夜の声に面を上げる。
「話を聞こう」
何があった――とは二人の役目を知っていれば聞く必要はない。なので、すぐに先を促した。




