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戦狂のキキ  作者: shio
第二章
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「鬼に船は使えぬ。なので安全な四国で資材と食料を整え、そして、ここに送り陣を敷いた。とはいっても、準備には一年近くかかった。評定でようやく戦の話ができるようになったのも最近の話だ」

「鬼に船は使えぬのですか?」

「お前も知っての通り、鬼に知性はない。船を漕ぐなど出来ぬだろう」

「では、泳ぐことも」

「ふむ、考えたこともなかったな。だが、おそらく出来ぬはず……水が苦手ということはなかろうが」


 咲久夜は考え込み、「……しかし」と付け加えた。


「そういえば、妙なことが一つある。知性もなく、それぞれが好きに動いているはずの鬼が、時折まるで兵のように京に雪崩れ込んで来ることがあった」

「ですが、わたしが戦った鬼は群れを成していました」

「あれは人を求めて集まっているに過ぎん。同族意識はあるようだが、隊列を組むようなことは出来ぬはずだ」

「では、知性がある鬼がいると?」

「そう考えるのが自然だが、もしくは、鬼を動かしている何者かがいるか……そうか、成程。いや、考えるべきだったのだ。キキ、お前のお陰だ」

「咲久夜様?」


 キキに笑いかけ、咲久夜は独り言のように続けた。


「父上や母上が知性のない鬼などに負けることはないと思っていた。いくら数が多くとも、京が落とされようとも帰って来れなくなるようなことはないと。だが、もし知性がある鬼がいるとすれば、もしくは別の何者かがいれば…………もしそうであれば……」


 窓の外……その夜の闇を見つめ、視線を鋭くする。まるで、闇に潜む『何か』を見定めるように。


(父上と母上を殺した者……鬼か、別の何かは分からぬが、真の敵は別に居る)


 そして、


(それは、おそらく我らよりも……)

「――咲久夜様は、この戦は勝てぬとお考えですか」


 急に放たれた言葉に、咲久夜だけでなく照灯と那都も声の主――キキへと視線を向けた。


「はっきりと物を言う」


 本当に妙なる子……自分の心を読まれたと思ってしまった。


「そうだな……隠さず言えば、先の京の戦いには総力を結集していた。つまり、戦に勝つためにはその総力以上の戦力が必要だということだ。時間がいる。人を集める時間と、人を育てる時間が。だが、鬼は待ってはくれぬ。今のまま攻め続けられれば力は消耗していく。だからといって撃って出ても全滅するだけだ」

「……咲久夜様」

「キキ」


 咲久夜はキキの言葉を止め、そして、微笑んだ。


「勝てぬと分かっていても、足掻きも必要だ。我らは自ら死を選ぶことを許されぬ」


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