七
巳一つ時から始まった評定だが、終わったのは申の刻にもさしかかった頃だった。
「ごめんなさい、キキ。まだ傷も癒えていないのに……」
「いえ、大丈夫です、照灯様」
心配そうに肩に手を添える照灯にキキは首を振った。実際それほど疲れていない。様々な事を、今の陰陽寮や武家、鬼討伐の状況を知ることができた。それは、キキにとって最も知りたい情報だった。
「ああもう、キキは可愛いなぁ」
「ぅむっ、な、那都様……っ」
「那都っ、なにを抱きしめているのですか!」
「えー、いいだろ。照灯はずっとキキといたんだから」
「それは、そうですけど……私も今日は一度しか抱きしめていないのに……」
「私もこれで一回だ。お相子だな」
「まったく、お主らは……」
那都と照灯のやり取りに笑い、そして、その笑いを苦笑に変え咲久夜は嘆息し続けた。
「しかし、いつもながら長かったな。どうにもならぬことをくどくどと……」
「…………」
「どうした、キキ。何か聞きたそうだが」
「わたしが話しても宜しいのですか?」
「言っただろう、我らは家族だと。遠慮は無用だ」
「わたしのような子供が戦の話をするのは憚れるのではないかと……」
「なるほど……良い、話してみろ」
「ここ、笠形山に陣を敷いたのは京の奪還のためだったのですね」
「うむ」
咲久夜は軽く頷いた。隠すことではない、まさに評定の目的がそうだったのだ。分かって当然だった。
キキがそう切り出したのも確認でしかない。本当に聞きたいことは次のことだった。
「……京は、鬼に落とされたのですね」
キキは一瞬迷い、そう続けた。鬼討伐の中心である陰陽寮。そして、陰陽寮の中心の一人である咲久夜。そんな人物に京が落とされたことを聞くのは、敗北の話をしてくれといってるようなもの……だからこそ、間を空けた。
「…………」
咲久夜は苦笑し、キキの頭に手を置いた。本当にこの幼子は気を遣う。どういう環境で育ったのか、幼子らしくないというのは……不幸なことだろう。だからこそ、照灯や那都が構ってしまうのだろうが。
「……少し長い話になる。まずは、疲れた。家に帰って休むとしよう。お前には他に話したいこともあるしな」
「わかりました」




