四
「……これから行く場所のことですか?」
「つまらぬところだよ。だが、そのつまらぬことをせねば進まない事もある」
咲久夜はふっと一息をついた。本当に気が進まないのか、話をすることすら億劫なように続ける。
「軍評定だ。武家の者達と今後のことを話し合う」
(武家……)
気になっていたことだった。武家という名を出すたびに、まるで自分達とは別の者を呼んでいるような印象がある。
(なるほど、組織か)
キキは内で呟いた。一枚岩の組織などそうはない。陰陽寮もそうなのだろう。
先程、咲久夜が話していた。「武家は後から加わった」、「だが、陰陽寮の下にいることに不満がある」と。だからこそ、中心者の一人でもある咲久夜の苦悩もある。そして、自分は咲久夜の側にいることになった。それは武家の者達とは別になるということだ。事に寄れば敵になることもありえる。
「――キキ、お前は白でも紺でもない。白の影となる漆黒となれ」
急に放たれた言葉に、キキは再び咲久夜へと視線を向けた。
「戦装束の話だ。お前は漆黒にしよう」
「ならば……わたしは咲久夜様の影となりましょう」
「ははっ、そういう意味で言ったわけではない。漆黒と言ったのはどこにも属さず自由にさせる為だ。陰陽師は白紅、武家は蒼紺。まあ、自然とそうなっていてな。だから、白である我らが表にでる。お前は影となって自由に動け」
果たして、それはどういう想いだったのか……咲久夜自身、何故急にそう言ったのか自分でも分からない。
咲久夜は内で呟いた――諸天童子、もしや神が囁いたか。
「漆黒は何にも染まらず、影は何にも捕まることはない。お前はそれで良い」
「……はい」
キキは頷く……今の言葉で自分の役割が決まった気がした。
どこにも染まらず属さず、影となり闇に融け、敵を討つ……鬼も、必要であれば人も。




