二
キキが死んだ時――正確に言えば転生する前に死んだ時、神様だか仏様だかなにかは知らないが、その女性は言った。
「お前の死は決まっていた」
「……そうですか」
キキはとりあえず頷くことにした。それ以外、どうしろというのだろう。
死んだことが分かっている以上、怒っても泣いてもしょうがないことだ。
「そうだな、それを理解できているお前だからこそ、死んでもらった」
こちらの心を読んだのか女性はそう続けた。
「貴女が神かどうかはわかりませんが、命を弄び生死を操りますか」
「神はそういうものだよ。輪廻を廻し廻し、久遠の時を続けている」
「いっそ、全て滅べばいい」
「無にはならない。いや、無などないよ」
「……それは、残酷なことですね」
「そうだな……必要だとはいえ、それを『残酷』と捉えてしまう、生の楽しみを知ることなく死なせてしまったことは申し訳なく思っている。だが、そうしなければならなかった」
そこで、彼女は初めて悲しみの表情を見せた。それまでは、それこそ神の彫刻のように何の表情も見せなかったのに。
「自分達ではどうにも出来ないため、人間を生み……そして、我々は頼らざるを得ない」
「……成程、分かりました」
生前に読んでいた哲学や宗教の本を思い出し、キキは笑った。
「神や仏は時代時代にあった人間を自分達の使いとして送った……それは本当だったんですね」
「ああ、そうだ。人間は人間が助け、そして、幸福は自分で作らなければならない。だが、時折思うこともある。幸福に出来ていない人間のほうが多いのではないかと。それは、我々の怠慢ではないかと」
「……安心しました」
成程……やはり、神は正しいのだろう。少なくとも、まともな神経を持っている。
「それで、わたしは何をすればいいんですか? どこかに送られるんでしょう、貴女の使いとして」
「ああ、そうだったな」
女性は少しだけ笑った。キキの理解が早いことを笑ったのか、それとも、こちらの心を読み「まともな神経を持っている」と褒められたことを喜んだのかは分からなかったが。




