表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦狂のキキ  作者: shio
第八章
184/461

十八


「ああ、哀れ頼通よりみち殿。権勢に囚われるあまり鍵は自ら造った平等院びょうどういんに隠し、尚、死出ののち、竜となりて宝を盗られまいと宇治の宝蔵ほうぞうを護るとは」

「我が名を呼ぶとは其方そなた何者だ……何をするつもりだ」

「御安心を……頼通よりみち殿のその業念、そして、宇治の宝蔵に秘め隠したる物、私が全て解き放ちましょう」

「ガァァァアアアアアッッッ!!!」


 白竜の咆吼に坊主達が転げ、篝火が吹き飛ばされた。


「ならぬっならぬっ!! この宝蔵に納めたるは我が一族の栄華の極み、我が一族の力の証っ!!」

「ふふ、陰陽師が封じ込めたる術を我が一族の力の証といいますか」

「黙れ、黙れっ!! それを奪おうとするのならば、その命無いものと思えっ!!」

「ふふふ……」


 月の閃光ひかりのみとなり川面が白く煌めく中、風に袖揺らし、立烏帽子は静かに笑った。


 ――果たして、畏怖を与えているのはどちらか。


「ガァァァアアアアアッッッ――――!!!」


 竜は口を開け手を開き、その鋭き牙と爪で漆黒の者へと襲いかかった。

 面布が揺れ、僅かに浮かび――白き肌が月に照らされる。

 瞳までは見えず、けれど、その美しい唇から、澄んだ声が紡ぎ流れた。


「――金鬼きんきよ」


 ザァァァァァ――――


 霧が舞い狂い、水滴が煌めき散らされる。

 竜の動きは止まっていた――いや、止まらされていた。開いた口、その鼻先を腕一本で止めている鬼一匹。

 金色の角を持ち、漆黒の兜のない大鎧おおよろいを纏った鬼――金鬼は残ったもう片方の腕を振り上げると、竜を殴り飛ばす。


「グァァアアアアアッッ――――!!」


 首が揺れ、けれど、すぐに竜は今一度口を大きく開き天へと咆吼した。


「ガァァアァアアッッ!! 奪わせぬ、奪わせぬぞっ!!」


 鬼、金鬼に向かい牙を向け――が、鬼に届く前に、竜の身体が止まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ