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戦狂のキキ  作者: shio
第八章
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「何故、朱雀大路がこんな広さになったと思う。ただ大陸の使者を迎える為だけだ、その為だけにこの路が造られた。貴族でない人間は路を通ることさえ出来ぬ。ふふ、骸を捨てたのは民のささやかな抵抗かもしれぬな」

「……今は綺麗なのですね」

「我らが片付けたわけではないがな。だが、おそらくは鬼が生まれる必要がなくなったからだろう」

「鬼が生まれる?」

「骸が溢れた結果どうなったと思う。鬼だ、鬼が生まれた。我らとは違う畜生の鬼だ」

「畜生の鬼……」

「そうだ、我らが攻めずとも京には鬼が生まれ住んでいた。京の人間共は骸から服を奪い、髪をむしり、自らの生きる糧とした。人は喰らっても、まことの鬼はそんなことはせぬだろう。それが京の人間共、畜生の鬼だ。そして、我ら真の鬼が来たことで居なくなった」


 ――成程、吉備とは違う。

 阿曽は内で悲しく呟いた。京に住む人間も……そして、カナも。


「陰陽師共もそうだ。四角四堺祭しかくしかいのまつりを為し、結界を幾重にも張って外からの鬼を防いでも、内から生まれた鬼はどうすることも出来ぬ。陰陽師は鬼を生み出すのを止められず、鬼を防ぐ事も敵わず、祓うことも出来ず、そしてどうだ、今や京は鬼の住処だ。面白かろう」

「……そうですね」


 先程はつまらぬと言い、今度は面白いと笑う。短い付き合いなれど、カナがどのような性格かは知っていた。だからこそ、阿曽は少し戸惑いつつ曖昧に笑った。

 吉備で共に在った時、初めにカナに感じたのは恐れだった。けれど、話す内にその恐れはすぐになくなり、そして、感じたのはどこか飄々とした、それでいて優しさを持った性格だということだった。

 けれど今は――珍しいとも思う。

 カナは苛立っていた。自らで攻め、鬼が京を治めたにも関わらず、それをどこか嫌悪するように。


「さあ、参ろうか。鬼の宮城きゅうじょうに」

「はい、カナ様」


 笑うカナの瞳に一瞬だけ鋭き光が灯り、それが一体どんな意かは分からず、今はただ頷き阿曽は後ろに従った。


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