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戦狂のキキ  作者: shio
第五章
114/461

二十六


「……温羅様は、城に居られたのですか」

「そうだと思いますが……どうかされましたか」

「鬼兵が居り、鬼人が居ることも分かりました。だからこそ、不思議にも思うのです。吉備を乗っ取り、かと思えば、今度は閉じ籠もり。そして、今になってこちらを攻めて来た」

「確かに、妙ですが……」

「しかも、鬼が集まっているにも関わらず城も壊れていない。街もそれほど荒れていない。鬼が近くの村なども襲ってはいない。鬼が多くなれば……言いたくはありませんが、人も必要になるはず」

「…………」

「鬼ノ城の鬼人は、人を求めていないのではないでしょうか。そう考えるなら、城の中に居た人や、逃げられなかった人々ももしかしたら生きているかも知れません」

「ぇ……」

「救えなかった命より、救える命がある。鬼を倒す為に戦うのでは無く、人を救う為に戦う。その方が良いではありませんか」


 狭依は心の内であっと声を上げた。この小さな少女は、自分が悲しい顔をしているのを知り、励まそうとしているのだ。

 鬼神のように強く、その姿を怖くも思っていたのに……改めて恐れの心なく真っ直ぐ見つめ、狭依は初めてキキはこんなに小さな女の子だと気付く。

 それもそのはず、キキは七つだと聞いていた。自分のほぼ半分の歳なのだ。


「キキ殿……」

「……『殿』などつけなくても大丈夫です」

「ですが」

狭依さより様がよろしければ、そのままでお話ください」

「私も『様』と呼ばないでください」

「わたしは『様』とつけるのがそのままなのです」


 頑なに断るキキに、子供っぽさを感じ狭依はくすりと微笑んだ。


「では、キキ……ちゃん」

「ちゃん……」

「ぁ、やっぱり嫌でしたか」

「いえ……何だか懐かしい感じがしました」

「懐かしい……ふふ、本当にキキちゃんは不思議な女の子です」


『ちゃん』と呼ばれておかしくない歳だというのに、懐かしいと話すキキに狭依はまた微笑んだ。


「…………」


 くすくす笑う狭依に、キキも微笑んだ。先程までしていた緊張も解け、口調も表情も柔らかく、そして……歳下の自分が言うのも変だが、子供らしくなっている。


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