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戦狂のキキ  作者: shio
第一章
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 キキが一人拠点に帰って来たのは、次の日の朝だった。

 だが、心配される声もなく、休むことも許されずすぐに居倉橋に呼び出された。


「……どうして呼ばれたか、分かっておろうな?」

「……はい」


 場所は訓練場の隅、キキは地に正座させられ、その前に居倉橋と十名ほどの兵士が立っている。


「お前は命令に背き、一人で行動した。許されぬ行為だ」

「はい」

「なにか言い逃れはあるか?」

「ありません」

「よし、では罰を与えねばならんが、俺にも慈悲がある。幼い子供をいたぶるようなことはしたくない」

「…………」

「だが、兵士達の目もある。上に立つ者として、命令違反は罰しなければならん」


 ――キキは冷たく隊長を見つめた。兵士をはべらせ、己を守るために「兵士の手前」とうそぶく。


「百叩きとはいわんが、十叩きくらいにしてやろう。棒を持ってこい」


 一瞬、


(このままでいいのか?)


 キキの頭にそうよぎった。このまま大人しく罰を受ければ、今後、奴隷のような扱いを受けるのではないか?


 目の前の全員を叩き伏せることは容易い……だが、そうすればここにはいられなくなる。住む場所がなくなるというのは大した問題じゃない。ただ、自分一人で鬼を全滅させることはできない。鬼を滅ぼすには組織が必要だった。

 であれば……我慢するしかないか。


「まず、一つっ」


 ――バチッ


「二つっ」


 ――バチッ


 背に当たる堅い棒に、キキは何も言わず歯を食いしばった。いくら強かろうと身体は幼い子供。大人が力一杯棒で殴り続ければ、肉は裂け、骨は折れるだろう。


「三つっ!」


 ――バチッ


 事情を知らない者達が哀れにこちらを見てくるが、誰も止めようとはしない。


「四つっ!」


 ――ビチッ!


 キキの着物に血が滲んだ――その時だった。


「もう止めよ」


 男ばかりの訓練場に似つかわしくない、澄んだ凜とした声が響いた。


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