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お花畑の悪魔

この作品は、執筆中の映画の脚本を小説にしたものです。

尚、少々、過激な描写がありますので、ご注意ください。

ご感想等を頂ければ幸いです。

24色の輝きに彩られた魔女達が集まる街。

その夜は、不思議とそれが36色に見えた。

どうやら、水死体に魔法にかけられたようだった。

ピアノの鍵盤。

ここは、白と黒の2色のモノトーンの世界。

その上を、その人の指先がしなやかに動く。

その軽やかな音に合わせて私は呪文を唱える。

その呪文にかかる男達。

その快感に心が反応する。

その夜は、その音が私の呪文を強力にしてくれているように感じていた。


非嫡出子。

非ってなんだろう。

ググってみた。

非とは、道理に反すること。正しくないこと。誤り。

私は、この世の中の欠点なのだろうか。

私は、誤った人間なのだろうか。

私は、正しい人間ではないのだろうか。

道理の反対語 無理。

私は、無理やり生まれて来たのだろうか。


乾いたピアノ音に合わせて、呪文にかかった王様が囁く。

それは、拷問の審判。

それは、肉体を交じり合わせるだけよりも高額な取引。

勿論、私は微笑んで王様のサディスティックな性欲むき出しの目を見つめて、トイレへ。

これも、私の何時ものルーティン。

そこは、自分と向き合える束の間の空間。

鏡に映った、魔女の顔を見つめて自問自答する。

これで、いいんだよね。


自分を納得させる事には、そう時間はかからない。

トイレから出た私に別の異世界から来ていた魔女が囁いた。

「あんた ここは風俗じゃないんだからね 迷惑な事しないでくる? もしかして、あんた淫乱?」

「え?」

「ママに言ってもいいんだけど」

どうやら私は、ここでも 非 らしい。

王様の横に座った時、その人が奏でる甘美なピアノの音が鮮明に聴こえてきた。

しなやかに動く指先。

なぜ、この人と出会ったのだろう。


タクシーの窓から眺める深夜の銀座。

色とりどりのクレパスの街が飛ぶように過ぎて行く。

ここでは、車の走る騒音も上品に聞こえる。

香水の香りと酒の匂いと加齢臭が交じり合った車内。

隣には、脂ぎったサディスティックな王様。

この王様、自分の城では妃と姫に邪魔者扱いされているらしい。

何時も、その怒りを私とのプレイで癒している。

馬車は、拷問部屋がある、けばけばしく輝くシンデレラ城の門の前に止まった。

ここで私は、寄生虫に養う日銭を稼ぐ為に拷問を受ける。

それは、何時もの事。それまで、それが、私の快感でもあった。

でも、その夜はちょっと違っていた。何か哀しい気分だった。

それは、目の前に黄金がぶら下がったいるのに取る勇気がない哀れな自分に対しての哀しみだった。

呪われる勇気さえあれば、こんな日に、こんな事をしなくてもよかったはず。

身体を貪られ、ムチを打たれながら涙が止まらなかった。

その涙が、いっそうサディスティックな哀れな大王を燃え上がらせた。

痛い、痛い、痛い。

私が痛みに耐える事に快感を感じる様になったてから随分の月日がたつ。

母親、学校の先生、同級生、上級生、下級生、彼氏、そしてすべての他人。

そのすべてが私の敵だった。

叩かれ、殴られ、蹴られ、水をかけられ、髪を切られ、焼かれ、罵倒ばとうされ、そして犯された。

でも、死にたいとは思わなかった。それは、自分にも幸せな未来が必ず来ると暗示をかけていたからだ。

ある日、この地獄を耐える暗示をかけた。

それは、この地獄を天国に変える暗示だった。


蛍光灯の街灯の灯りがチカチカとしていた。

日の出にはまだ早い朝。私は、錆びた鉄で出来た階段を痛みをこらえて登っていた。

2階の一番隅の部屋。そこが、不定期に私の叫び声のような喘ぎ声が響く館。

日本人は、先祖が源氏と平家のどちらかの様に必ずサドかマゾのどちらかだと思う。

このアパートの住人達もそのどちらか。だから、私はこれを迷惑行為だとは思ってない。

むしろ、住人達の本能を呼び覚ましてあげているボランティア活動だと思っている。

寝室に入ると寄生虫が丸まっていた。

その寄生虫が私のフェロモンの香りに気がついたて目を覚ました。

「遅かったね?」

「うん」

「何してたの?」

「何にも」

「ふーん」

「ちょっと 寝て出て行くから」

「そう 気をつけてね」

と言って、また、丸まったて安全なミノの中にもぐり込んだ。

気をつけてね。その言葉に罪悪感を感じた。

なぜなら、ムチ打ちされた傷が癒えるまで寄生虫のものにはならなかったからだ。

ばれるのが怖かった。

これは、ほんの少し私に残っている乙女心。


私は、水死体の彼の顔が見たくなった。

見ることが出来るのは、これが最後のチャンスだと思ったから。

そして、家族の顔も。

金曜の昼前。

私は水死体の彼と待ち合わせた赤坂のホテルに入った。

お別れの会。

私にとってみたら、お楽しみ会だ。

彼は、私と似ているのだろうか。

鼻 目 口 耳。

この時は、そんな幼稚な気分だった。

部屋に入ると目の前にお花畑が広がった。

その色とりどりの花の中に彼がいた。

この人なんだ。意外と若かった。

お花畑の横に若い女が立っていた。

長い黒髪。悲しげにうつむいていた。

ぱっと見て、高校生だろうか。

奥さん? 彼女? 水死体の彼、JKが好き?

普通に考えたら、彼女は水死体の娘だと思ったのに違いない。

でも、この時は、こんなふしだらな事しか思いつかなかった。

気がついたら、この会は彼女と二人きりだった。

なぜ?














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