第3記ー3 融和/レイジが決めるこれから
ようやくできたので投稿。第3記については全体的に後で見直すかも。あとがき含め。
ーーー八百屋 なま〜 ーーー
「ん? 虹夢のことを聞きたい? 俺はほとんど知らんけんな〜。 知ってることといりゃあいつが俺の野菜をヒロモトに届ける時の顔が仕事人って感じで一生懸命やっとんな〜ぐらいだな〜。 お、そうだおめーバイトしてみねえか? うちは特に困ってないがいい人生経験は積めるよう〜? あ? 断る? そうかい、まあやりたくなったらいつでもこいや〜」
「……ナチュナルに話が進んでナチュナルにバイト振られた……」
相川にて一つ返事でバイトの誘いを断った後、様々な店をレイジとシザーは渡り歩き、虹夢について様々な話を聞いた。
そのほぼ全てでバイトの誘いを受けたが。
そして今は八百屋なま〜に足を運び、店長の野沢菜郎に話を聞いた。
そこで聞けたのは、虹夢は物事に一生懸命取り組む少年であるということだ。
「次に行くか」
割とストレスなしで話が終わった八百屋を後にした二人は、
最後の店、中華料理店ヒロモトへと向かった。
二人が店内に入ると、店長が出迎えた。
「よう、待ってたぜ。レイジ君」
「よろしくお願いします、広元さん」
互いに礼をした後、店長とレイジは本題の話を始める。
「虹夢のことを聞きたい、だったな」
「はい」
「…じゃあ、まずは、これまで聞いてきたことであいつをどんなやつと思ったか聞かせてくれ」
「え?………聞いた限りではあいつは、」
店長はレイジにこれまで聞いたことで感じた虹夢の印象を聞いてきた。
何故かとレイジは少し思ったが、素直に答えることにした。
「あいつは、優しく、純粋で、一生懸命に物事に取り組むやつ、そう感じました」
「……そうか、じゃあ、それを聞く前に君はあいつをどう思っていたかを、聞かせてくれ」
レイジの返答を聞いた店長は静かに頷き、更に追加で聞いた。今度は町の皆から話を聞く前に感じたことを。
「……相手の裏を読まず、自分がどうなるかを考え切らずに、役に立てるならそれでいいと思って危険な行動をしようとする、純粋だけど、その純粋さが危険なやつ」
それにレイジは、一呼吸置いてから、純粋だけど危ない、と答えた。
「だけど、だからこそ、どこかほっとけないやつ」
そして最後にそう付け加えた。昔の自分に似てという言葉は飲み込んでだが。
店長はそれを無言で聞く。そして一度大きく息を吸った後、語り始めた。
「あいつは、人の役にたつことで、無意識の内に自分の存在が必要だって証明しようとしているんだ。もちろんただ純粋に人を助けようという優しさからのものもある。じゃなかったらあの床屋には行き続けない。だが誰かの役に立つことができなければ自分は要らない存在、そう思われることをどこかで怯えているんだ。だから頼まれごとは引き受けようとするし、引き受けたからには全力でやり遂げようとする。」
ここまでの話を聞いて今まで町の人たちから聞いたこととこれが繋がり、レイジは様々なことに納得した。
虹夢が何故人の役にたとうとしているのか、どうしてそれを拒まれた時に悲しそうな顔をしたのか。
しかし本題のことがまだわかっていない。
「あいつは、時折り自分をごまかそうとしている、それは何故だ?」
そう、レイジが今こうして様々な者たちから話を聞いているのは、
虹夢が何故無理して自分の感情を隠そうとするのか、それを知りたかったからだ。
それを知るためにレイジが聞いた問い。それを聞いた店長はレイジへとその瞳を向ける。
「……簡単な話だ。あいつがまだ子供だからだ」
「子供……?」
そして子供だからと答えた。それを聞き、首をかしげるレイジ。
「ああ、一人で生きるためには、強くないといけない、しっかりしないといけない、だから、自分の弱さを表に出そうとしてくれない。前に一度失敗した時、泣きそうだってのに、それを隠そうとした。弱さを見せないために。」
「…………弱さを、見せないために……」
弱さを、涙を見せない。だから最近ごまかそうとしていたのか、
そう考えたレイジは、何の涙を隠そうとしているのか考える。
そうして暫く考え込んだあと、気づいた。虹夢の優しさが関係していると。
(あいつは、やつらを倒したことに傷ついている、だからつらそうにしていたんだ……)
レイジは拳を握った。戦えば虹夢の心が傷つくのは、
考えれば当たり前のことであるのに気づかなかったから。
「……なあ」
そんなレイジに店長が声をかける。
「頼みがある」
頼みがある、そうレイジに切り出した。
「頼み?」
「ああ。あいつは、まだ子供だ。どんなに強がろうとしても、ひどくもろい。だから、支えてやってくれ。あいつが本当の意味で強くあれるように」
店長はそう言って、頭を下げた。レイジはどうすればいいか暫く考えた、が、
「……わかりました」
結局受けることにした。元より虹夢のことは助けるつもりだったからだ。
それを聞いた店長は頭を上げた。
「でも、」
その直後に、レイジが、でも、と続ける。店長は首をかしげた。
「貴方も、あいつを支えてやってください。そこまで虹夢のことを思っているなら、貴方だって虹夢を支えられる」
レイジはそう言った。微笑んで。それを聞いた店長はガハハと笑う。
「ハッハッハッハ! 君が来る前にもそこのコウモリ君に言われたよ」
どうやらシザーにも頼み、了承後に似たようなことを言われたらしい。
「まあ、コウモリ君の場合は、貴方はもう十分虹夢にとって大事な存在だから支えるのは当然、
だったけどな」と加えたが。
「ハハハ……わかった。俺もあいつのことを支える。君達も」
店長は了承した。自分も虹夢を支えることを。
「ああ」
「わかってますって」
レイジとシザーも、改めて了承した。
「ああ、それと、」
「?」
「ほぼ年中無休の、あの海の海の家がバイト募集してんだ、入ってやってくんねえか?」
「……考えときます」
「あ、おーいレイジ〜! シザ〜〜!」
その後、レイジとシザーは店を出た。するとちょうど虹夢が野菜の仕入れから帰ってきた。
虹夢は二人に手を振るう。
「どうして二人がここに?」
「ちょっと用があってな」
「?」
虹夢がどうしてここにいるのかと聞き、レイジは適当に返す。
それに虹夢は首を傾げる……実にいいシーンだが、
「……!」
それを強制的に終わらせるようにレイジが何かを感じ取った!
「どうしたの?」
「やつらが現れた!」
虹夢が急に動きを止めたレイジに問いかける。レイジはやつら、海賊がきたと告げる。
それを聞いた虹夢は素早く仕入れ品を店に置き、レイジとシザーと共に海へ向かった。
海には数体の黒いのっぺらの人型、鎧を身にまとった、巨大な黒い熊二体、そして、
「我が名はハクシキー、大いなる生きた知識の宝庫なり!」
頭にシルクハットをつけ、手にはタブレットらしきものと指揮棒のようなものを持った黒い細身の体の怪人“ハクシキー”だった。
「またおまえか」
ハクシキーが決め台詞を言い放った直後に、虹夢達は到着した(横のセリフはシザー)。
「ぬ! 貴様ら! この間はよくも……」
【翔雷 ナスティングノイズ】
バジィ!! ドゴオオォーーーン!!
「ぐわあああああああああ!?」
ハクシキーが虹夢達へ文句を言おうとしたのもつかの間、
シザーが交輝レコード 翔雷を口に入れ、特殊技の“翔雷 ナスティングノイズ”での雷をハクシキーに落としてダメージを与えた。
「ぐおお……貴様……ぐは!?」
「そう何回も文句は聞けねえ」
今度はレイジが雷覇翼斧の銃モードから撃った弾丸がハクシキーを再び地面に倒れさせた。
「あれ? それってレイジも使えるの?」
それをみた虹夢は雷覇翼斧、もとい迅雷龍突牙はレイジでも使えるのかと、気になったのか聞いた。
「あくまで俺が使える方があるだけだ。そしておまえのはこっち」
レイジはそう答え、虹夢に迅雷龍突牙を渡した。
それを受け取った虹夢はシザーから交輝レコード 翔雷を受け取り、
迅雷龍突牙にセットし、雷を描くように振り下ろした。
「雷・竜・装!」
その瞬間雷鳴が虹夢の周りを迸り、雷鳴が消えると同時に虹夢は戦闘形態『雷竜』への変身を完了した。
「ん? それは、“変練ノ纏”!」
「変練ノ纏?」
虹夢の変身を見て、ハクシキーは変練の纏と言った。
なんだそれと言わんばかりに首をかしげる虹夢、レイジ、シザー。
「あの時見てよもやと思ったが、まさか本当に存在していたとは!」
「いやあの……なにそれ?」
「何!? 纏っておいて知らぬだと!? いいだろう教えてやる!」
凄まじく興奮するハクシキーに、虹夢は変練ノ纏とは何か聞いた。
ハクシキーは身にまとっているのにも関わらず変練ノ纏を知らない虹夢に驚きつつも、
変練ノ纏について解説を始めた。
「変練ノ纏とは、数千年前にある錬金術士が作り出した、レンジンの力を人型のものへと反映させるための体だ!
そしてレンジンとは、地球の自然の力をその身に宿した生命体で、錬金術士が作り出したものと自然に生まれたものの二つが存在する! 以上!」
「なるほど」
ハクシキーの解説を聞き、変練ノ纏について理解した虹夢。
なお、さっきの説明はハクシキーが嚙み砕いて行ったものなので、
改めてここで解説。
なお、ハクシキーの解説とは少し内容が前後する。
・レンジン
はるか昔より存在する、疑似的な神のような存在であり、一応は生命体。
レンジンには地球にまつわる自然の力をその身に宿しており、強大な力を持つ。
なお、自然発生するもの、人為的に作られたものとの二つが存在する。
・変錬の纏
数千年前、ある錬金術師がレンジンに興味を持ち、その力を利用するために作ったものであり、もう一つの体とも言える。
媒介となるものからレンジンの力を汲み取り、纏うことでその新しい体は作り出され、レンジンの力が使用者に反映される。
使用中は体への外的ダメージを抑え、変身解除後の元の体を保護する。
変錬の纏を纏った状態で部位を損傷しても、元の体には多少の傷程度で済まされる。
なお、レンジンの力を借りれないと生み出せない。
その横で「知らなかったすか?!」、「知らねえよ!」と、シザーとレイジは言い合っていた。
「じゃあ、行きますか!」
ハクシキーの解説終了直後、戦闘形態雷竜、もとい変練ノ纏『雷竜』へと変身した虹夢はすぐさま高速移動で怪人たちに近づき、迅雷龍突牙で蹴散らした。
「なぬ!? へ、ヘビィミストベアー! やつを潰せ!」
「ゴアああああああ!!」
ハクシキーの指示で、ヘビィミストベアーと呼ばれた、鎧を纏った熊が虹夢に襲いかかる。
虹夢はその攻撃を高速移動で避けつつ、雷覇翼斧で弾丸を打ち込み、
ハクシキーとヘビィミストベアーに特殊電気を帯電させる。
それから迅雷竜突牙の弦を弾き、回転しながら振り抜く。
【雷龍覇邪一閃 嵐の型】
「ぐわあ!?」
そうして放たれた雷龍覇邪一閃 嵐の型。
雷でできた龍が広がりながら虹夢の周りを旋回し、ヘビィミストベアー二体とハクシキーを吹き飛ばす。
その隙を狙い、虹夢は再び弦を弾く。
【雷龍覇邪一閃 波の型】
今度は雷龍覇邪一閃 波の型、雷の龍が、波打つようにヘビィミストベアーの一体へと向かう。
まともに喰らうヘビィミストベアーだが、耐え切ろうとしている。
【雷龍覇邪一閃 貫の型】
そこへ雷の龍を矛先へ纏わせ敵に向かい、
発生した放電の衝撃波で敵を粉砕する雷龍覇邪一閃 貫の型をヘビィミストベアーにぶつけた。
ヘビィミストベアーは胸にどでかい風穴を開け、爆散した。
「よし……」
ヘビィミストベアーを倒したことで、虹夢は迅雷竜突牙を持つ手を更に握る。
「ヘビィミストベアーを倒すとは……だがこれはどうだ! とう!」
ヘビィミストベアーが倒されたことで一瞬焦るハクシキー、
だがすぐに平静を取り戻し、残ったもう一体のヘビィミストベアーに向かってジャンプした。
するとヘビィミストベアーとハクシキーが合体し、顔がハクシキーのものとなった。
「これぞわが戦闘能力を補強する秘策! さあとくと受けてみよ!」
「く!?」
強化されたハクシキーの攻撃を、虹夢はなんとか躱していく。
しかし、回避を見切られ、強化ハクシキーの攻撃を喰らってしまった。
「うわ!?」
大きく引き飛ぶ虹夢。なんとか立とうとした所へ強化ハクシキーが更なる攻撃を繰り出す。
咄嗟に眼を瞑り、ガードしようとする虹夢。しかし衝撃は来ず、なぜと思いつつ眼を開けると…
「ぐ……」
「うおあ……」
レイジが雷覇翼斧と雷爪断弓で、シザーが自らの羽で強化ハクシキーの攻撃をガードしていた姿が写った。
「! どう、して……」
どうして守ろうとしているのか、そう問おうとした虹夢よりも先に、二人は叫んだ。
「虹夢! 涙をただ全部飲み込むのが強さじゃないぞ! 悲しいときはちゃんと言え!」
「!」
「強さっていうのは、誰かに頼ることを覚えなきゃやって来ない! だから…」
「「だから俺たちをもっと頼れ! そんで自分の弱さと向き合え!」」
「ちゃんと支えてやるから…」
「同じく!」
レイジとシザーの、頼れという叫び、それを聞いた虹夢は……
「ありがとう、だったら支えて、俺も、頑張るから」
強化ハクシキーの攻撃を耐えている二人の背中に手を回し、そう語りかけた。
対しレイジとシザーは「「ああ、もちろんだ」」と答えた。
同時にレイジは雷仁竜へと姿を変え、強化ハクシキーを吹き飛ばす。
その頭上へ、虹夢は降り立つ。
「行くよ! レイジ! シザー!」
「「ああ!」」
行くよ、といった虹夢に、レイジとシザーは頷く。
強化ハクシキーはまずは雷仁竜を倒すためその爪を雷仁竜に振り下ろす。
「……ふん!」
しかし、その爪は、虹夢の雷覇翼斧と共に振るわれた翼と腕のカッターにより、
破壊され、もう一方の翼と腕で退け反らされる。
そこへ雷爪断弓の矢と共に翼と尻尾より放たれた雷の矢が迫り、強化ハクシキーを大きく後退させる。
「ぐおおおおおーーーーーー!?」
「はあああああ!!」
更にそこから虹夢が迫る。右手には帯電状態の迅雷龍突牙、左手には雷の刃を形成した剣モードのシザー。
【翔雷 ナイティングブレイク】
【雷龍覇邪一閃 斬の型】
高速移動により多方向から繰り出される斬撃を強化ハクシキーは全てまともに喰らう。
実は事前にシザーに自らの血を与えることにより、シザーの切れ味と自身の力をパワーアップさせていた。
それにより、ハクシキーは自分の想像以上のダメージを受けていた。攻撃を終えた虹夢は二人に宣言した。
「シザー! レイジ! 止め行くよ!」
「「わかった!」」
それにシザーと雷仁竜も答え、虹夢はシザーから交輝レコード翔雷を取り出し、
迅雷龍突牙にセット、弦を弾いた。
【雷龍】
それから虹夢は走り出し、雷仁竜も飛翔体制に。
そこから雷仁竜の頭部へ飛び乗り、シザーと迅雷龍突牙を構える。
そして突き出すと同時に雷光となって強化ハクシキーへと突進する!
【覇邪】
「ぐ、ぐおお…!?」
【一閃】
「ハアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
強化ハクシキーは暫くの間、その突進を耐え続けた。しかし、
ズドオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーオオオオンンン!!!!
「ぐは!?」
遂にその体を貫かれた!
【翔龍迅雷激進の型】
「まさか、この状態で敗れるとは…ぐおあ!?」
ドバアアアアアアアアアンン…………!!!!
雷龍覇邪一閃 翔龍迅雷激進の型によって貫かれた強化ハクシキーは爆散した。
ーーー次の日ーーー
翌日、海の家にて、レイジは働いていた。といっても今は店番だが。
「さて、これからだ」
レイジは空を見上げた。まるで誓いを立てるように。
ーーー追記ーーー
「ん? あれは…」
レイジは精肉店兼焼肉店充豚苑の近くにて、見覚えの有る影を見る。それはここにはいないはずのもの。
それからすぐにレイジはその場を後にしたが、この影を気にし始めた。
ーーー追記2ーーー
ハクシキーとの戦い、その時、別の場所からその戦いを見ていたものが、いや者たちがいた。
「あれは…何?」
「あれだ、あれだったらこの世界を…!」
この二人、それぞれ後に関わることになるのだが、それは別の話……
サブタイトル変更