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地下帝国 ~導かれし者たちの~  作者: 井吹 雫
4/9

~目覚め~3

 わわっ! また更にブックマークを付けて下さった方が!

 本当にありがとうございます! こうやって目に見える形で読者様が増えることが分かるのが、作者は本当に嬉しいです。

 更新頑張ります!




『――何だとはなんですか?』


 次々と映し出されていく黄宙高校と思われる学校内。

 画面の中の教室や廊下は赤黒く染まり、それが何を物語っているかは一目瞭然。


「っ! んなもん見りゃ分かんだろーが!」


 そう言って声を荒げながら、竜也はテレビに向かって勢いよく近付いていく。


「この今映っているバケモンは、何だって言ってるんだよ!」


 まるで、画面の中に映し出されているものがどうしたとでも言いたげな、仮面男の声色。

 一方の竜也も、そんな他人行儀な態度の仮面男に腹を立てた様子。

 苛立ったように叫びながらテレビを鷲掴みにしようとしたが、寸での所で雅也に取り押さえられてしまった。


『――今はまだ皆さんが居る教室にもセキュリティが作動している為、扉はロックが掛かっています』


 そんな二人の事はお構いなしなのか、何事もなかったかのように話を進めていく仮面の男。

 桜達のことをリアルタイムで目視している事は、画面を通して察することが出来る。

 しかし、余程早く事を進めたいのであろう。

 苛立っている訳でも焦っている様子でもない仮面男の声色は、どこか早くやりとりを終わらせてしまいたいが為の言動とも取れた。


『――なので画面のやつらが教室に入ってくる心配もありません』


 たまたまなのか、それとも狙っていたのか。

 再び切り替わった画面に映し出された新たな人物。

 いや、もはやそれを人物と呼んですらいいものか。


『――しかし一〇分後……。一〇時と共に全てのロックは解除されるので誰でも出入りが出来るようになる』


 映し出されている恐怖の根源。

 それは身体のあちこちが腐敗しており、とてもではないがこの世の者とは思えない姿で、うめき声を上げながら浮浪している。


『――そうなれば、君達が居るその教室にも奴らは簡単に侵入することが出来ますね』


 一人淡々と話を紡いでいく仮面男。

 だが、この男の話を遮る者は誰もいない。

 むしろこの場の誰しもが、言葉の発し方を忘れてしまったかのような静まり返り。


――……それって、つまり……――


 きっと、桜を含めた教室内にいる全ての生徒が同じ事を思ったのだろう。


「――我々は、やつらに襲われ殺される……と。そういうことか」


 桜や他の者、先程まで声を荒げていた竜也でさえ口に出せなかった恐怖と事実。

 それを透子が、低く、そしてはっきりとした声で表し、皆の沈黙を破ってみせた。


――殺、され……――


 透子が言葉に出してしまった事で、脳内で具現化されてしまった現実。

 既に止まってしまっていた思考回路が、その一言だけを何度も何度も繰り返していく。


『――そうですね。ロックが解除された後も何もせずにそこにいれば、いずれ奴らは君たちの匂いに気付いて襲って来るでしょう』


 そんな桜達の代わりなのか、はたまた身体に染みついてしまっているからなのか。

 透子が発した言葉へ、ごく当たり前のことのように答えた仮面男。

 その流れるような受け答えを耳にして、今度はようやく竜也が我に返る。


「はっ、……何馬鹿な事を言ってんだよ」


 先程までの威勢は何処へ行ってしまったのかという程の静かな声。

 きっと竜也も、既にこの現状が事実だと受け止めているのだろう。

 身体を押さえていた雅也に小さな声で「離せ」と伝えると、落ち着いた声でテレビに向かって話し出した。


「そんな馬鹿な話信じられるかよ。第一ここは学校だぜ」


 助けを呼べばすぐに誰かが来るだろうがだなんて発した竜也。

 それを受けて、先程まで固まっていた周りの生徒達も次々と同意を始める。


「そうだそうだ、助けだ!」


「警察に連絡をすればいい?」


「いや、その前に先生達を呼ばないと!」


「あれっ? ていうか、私の携帯は?」


 やっと見つけた僅かな希望。

 桜と透子を除いた生徒達が、我に返ったように動き出す。

 各々がポケットの中や周囲を探し始めた教室内。

 しかし、誰一人として携帯どころか己の持ち物すらも見つけることが出来なかった。


「おいっ、俺達の荷物を何処にやったんだよ」


 なんて仮面の男に問い詰めた竜也。

 既にもう、この仮面の男に刃向かっても意味がないと判断したのだろう。

 相変わらずの口調ではあるが、竜也は何処か冷ややかな目をしてテレビを見据える。

 すると、何を言っているのだとでも発するかの如く、呆れたように答えた仮面男。


『――そんな物を用意している訳ないでしょう』


 やはりというべきか、あっさりと言葉を落とした仮面の男は、続けてこうも付け加える。


『――ちなみに窓のサッシには細工が仕掛けられているので、触った瞬間に高圧電流で死にますよ』


 流暢に話しながら、そう言って僅かに顔を窓際へ向けた仮面男。

 皆が釣られてそちら側に視線を向けると、丁度そこには今まさに窓へ手を掛けようとしていた男子生徒。


『――正式には死ぬと言うより黒焦げですね――』


 なんて言葉が出るより早く、自身の長い髪を束ねていたシュシュを取って窓に向かって投げた透子。

 男子生徒の目の前を勢いよく通過したシュシュは、窓枠に当たると同時にけたたましい音を立てて火花を散らした。


「キャッ!」


 誰かが反射的に叫び声を上げる。

 一番間近でその光景を目の当たりにした男子生徒に至っては、あまりの衝撃に腰を抜かしてしまった様子。

 そのまま静かに床へと落下した透子のシュシュ。

 すっかり黒焦げとなり使い物にすらならなくなってしまった物を、透子はゆっくり近付くと、ハンカチを使って無言で拾い上げた。


『――君たちに選択の余地はないんですよ』


 一方、仮面男は静かに、しかし脅しにも近い口調で皆へ語り掛ける。


『――窓や昇降口、ありとあらゆる外部へと続く入り口は全て高圧電流により触ることも出来ない。一〇時になれば教室のセキュリティも解除されてやつらが侵入してくるだろう。つまり君達は絶体絶命』


 やっと話の核心へと辿り付けるからなのだろうか。

 話している仮面男の声色は、無関心のような疲れのような感情が一切読み取ることが出来ない高揚振り。


『――しかし。君達が生きたいと言うのなら一つだけ助かる方法を教えよう』


 そう言って、仮面の内側で笑った男。

 いや、本当は笑ったのかどうかも桜達には分からない。

 それ程までに不気味な現実。


『――やつらと戦え』


 なんて発した言葉の意味を、桜を含めた教室内の生徒達が理解をするのに、そう時間は掛からなかった。




 明日も続きを更新致します!

 仕事が終わり次第なので、時間は未定です。

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