~目覚め~
一年振り投稿となってしまい、申し訳ございません。汗
作者は元気です!
完全に某動画投稿サイトでの配信活動にハマっていました……。
――二XXX年六月一〇日 午前九時四五分――
――キーンコーンカーンコーン……――
『――……を、開始致します。繰り返します……第四〇二五回、……実験を、開始致します』
頭の奥でかすかに聞こえる、アナウンスの声。
しかし桜は、そのアナウンスの声に反応する事が出来ない。
――……な、に。何が始まるの……――
まるで、この身体が自身のものではないような、そんな感覚。
今、自身がどこを向いているのか、それすらも分かっていない。
「……い、たい」
無意識に言葉を落とした桜。
だが、声を発した事で、ようやく頭が動き出す。
「えっと……」
なんてぼやきながら、桜は目に映った環境から、自身が横たわっていることを認識した。
「……っ」
腕を動かし、桜はゆっくり起き上がろうと試みる。
しかし、鉛のように重い身体。
それでもなんとか起き上がらなくてはと感じた桜。
必死に全身へ力を入れようと、瞼をぎゅっと瞑り意識を集中させた。
「……よ、し」
きっと、瞼に力を込めたおかげで、いくらか頭に血が通ったのだろう。
あちこちに重りが付いてしまっているかのような全身の感覚。
そんな屍のような状態を奮い立たせ、桜はどうにか上半身を起こすことに成功した。
――ここは……、どこだっけ――
まだはっきりと意識が戻っていないのか。
起こした身体でぼんやりと辺りを見回しながら、桜はそっと自身の身体を擦ってみる。
――……割れた黒板に、端へと追いやられている机。……あれ? 私の肌、こんなにボロボロだったっけ?――
なんて考えが回り始めるくらいには、意識がはっきりしてきた様子。
「ああ、そうだ」
ゆっくり息を吐いた後、桜は再び大きく息を吸い込むと、一つの答えを導き出す。
――ここは、私達の高校『黄宙高校』だ――
ようやく、今いる場所が分かった桜。
しかし桜は、それと同時に新たな疑問へと直面した。
もう一度確認をするように、ゆっくりと辺りを見回してみる。
確かにここは、桜が通っている学校内そのもの。
室内の造りも教室内にある物も、ありとあらゆる全てがそれを物語っている。
――だけど、なんだろう。私の知っている学校では、ない――
何度も上書きされたかのような不自然な程に綺麗なペンキの壁に、塵一つない無機質な教室。
通い慣れている学校の教室な筈が、不気味なまでに一切の生活感も得られる事が出来ない。
その事実が段々と恐怖となって押し寄せてきた為、桜は必死に記憶を辿る。
――だめだ、なにも思い出せない……――
いくら頭を回転させても、思い出せるのはここが黄宙高校で桜はここに通っていたという事実だけ。
自身が何故教室で倒れていたのか、どうしてこの場所にいるのか。
それすらも桜はなにも、思い出せないでいた。
「それにしても……なに、この臭い」
きっとまだ、目覚めたばかりだからなのだろう。
いくら考えようとしても、なにも浮かばないだけの桜。
半ば思考が停止しかけてきた頃、ようやく桜は今一番率直に感じている疑問を口にした。
――消毒したような、薬のような……まるで、臭いでこれから起こる何かを隠してしまったかのような――
どこかで嗅いだことのある嫌な臭い。
でもどこか懐かしくもあり、桜は不思議な感覚に見舞われる。
――分からない。怖い筈なのに、どうして私は安心しているの――
自身の感覚と何も思い出せない事への恐怖。
知らない環境だと分かっているのに、ここは桜が見慣れている高校の教室と同じ造り。
いや、もしかしたらここは本当に黄宙高校なのかもしれない。
それでもやはり、桜はこの現状を何一つ思い出すことが出来ない。
そんな中での懐かしくもある薬品の臭いに、桜の心はどんどん不安と恐怖が入り交じっていく。
――駄目だっ! ここでは一番、冷静でいることが大切なのにっ――
感情の対比に心が付いていけなくなり、段々と冷静さを失っていった桜。
しかし、そこまで考えてから、桜はふとある事へと気が付いた。
――……あれ? どうして私、冷静でいることが大切って、知っているのだろう――
一気に全身から、血が引いていくのが分かる。
だがそれは、不快なものでも、ましてや恐怖でもない。
ただ静かに、桜は自身がすっと冷静になっていく感情に安堵を覚えた。
「……うん、大丈夫。きっと大丈夫」
そう言葉を落として、桜は自身を落ち着かせる為にゆっくりと目を閉じた。
「っ、いってぇ」
静かに目を閉じ、呼吸を整えている桜の側。
一人自問自答していた時には全く意識にも入っていなかった第三者の声に、桜はやっと興味が向いた。
閉じていた目を開き、静かに声がした方を見る。
すると、そこには桜と同じ黄宙高校の生徒で、同級生の男の姿。
桜と同じようにゆっくり身体を起こすと、気怠げに辺りを見回している。
「おい、雅也起きろ! なんだよここは」
なんて声を荒げたかと思うと、身体を起こした九条 竜也は、すぐ隣に横たわっている双子の弟の事を乱暴に揺さぶった。
明日も続きを投稿します!
時間は未定! 仕事の上がり具合によりますが、ご了承頂けたらと思います。