3
「彼の名前は、ゲコ太リターンズ。わたくしの親友だ。初めて会ったのは3年ほど前、学校からの帰り道だよ。そのときはゲコ太って名前だったんだけれど、一緒に下校していたら一度行方不明になってね。毎日泣いていたわたくしのところに、しばらくして自分で帰ってきたんだよ。親友だからね、わたくしの場所がきっとわかったんだよ。その時に、リターンズって追加でつけてあげたんだ。かわいいでしょ」
「……」
聞けばきくほど、ゲコ太とゲコ太リターンズは別物にしか思えないが。
言わないほうがいいのだろう。
「それって別のカエルだよね」
「部長!」
「なにっ!?」
「お金渡すから飲み物買ってきて!」
「わかった!」
まずは邪魔者を排除する。
「本当にあの人が部長なんですか? わたくしには君が部長に見えるけれど」
「助っ人だよ。一時的なね」
部外者であるのに。
放って帰ってしまってもいいのに。
自分の行動と考えがうまく合わず、少し嫌になる。
「それで、こいつの婚約者を探すってことなんだが……その、言ってしまうのもどうかとは思うんだが、探し方がわからない。カエルの婚約者っていうのは、相手もカエルでいいんだよな」
「こだわりはない、とゲコ太は言っている」
「ゲコ」
本当に意思疎通ができているなら驚きだが。
「ゲコ太は好きな相手の前だと、緊張して動けなくなるのだけど。どうにかそれをうまく使って、見つけることはできないかしら?」
「うーん。まあ何もないよりはわかりやすいと思うが」
ゲコ太の前にひたすら何かを連れてこればいい。
言えば簡単だが、楽な仕事ではない。
「かずまぁー」
部長が帰ってきてしまった。
次はどう追いだそうか。
「あのね、ジュースどれがいいか聞くの忘れてたんだけど。その……勢いよく出て行ってしまったから戻るのが恥ずかしくて……でも嫌いなジュースだったらいやだし。どうしようかって悩んで、何買ったらいいか、何か買ってしまえば楽になれるんじゃないかなって思って――プリン買ってきた」
「……すまん。俺ヨーグルト派なんだ」
「買いなおしてくる!」
勢いよく飛び出していく部長。
これでよしだ。
「さて、話を続けるか」
「ずいぶん立派な部員をお持ちのようね」
まああれほど馬鹿な部長は他にいないだろう。
部員のために走り回るなんて。
「まあ、君の相談の内容的に、あいつの力はどうしても必要になるんだろうな。必要なのは人手だ。そもそも部長とは言っても、あいつがやってることは——俺が手伝おうとしていることは、部活動ではないからやれることは限られてくるし」
「でも、ここしかなかったのよ。頼めるのは」
そりゃそうだろうな。
「明日から探してみるか。とりあえず手当たり次第、生き物でもなんでもそいつの前にちらつかせればいい訳だよな。なんだ、超簡単だな」
言ってみてやはりできる気がしなかった。