7
「ここで最後よ」
俺たちが来ていたのは、元美術準備室。
いまは、仮名なんでも部の部室だ。
「ん? ここは別に怖い場所じゃないだろ?」
「知らないの? この部室は昔からでるって噂なのよ。だから本当はここには来たくなかったんだけど。もう崖っぷちだったから」
「部長は知らなかったろうなあ」
すぐ後ろでガクガク震えているから間違いない。
「知っていたらここは選ばないでしょうね。他にも結構、空いてる教室はあるもの」
すごく後悔してるみたいだからそれ以上は言わないであげてくれ。
「ここの写真はどうする? 入り口から一枚でいいのか?」
「えっと、なんていうか……」
唯野は言いにくそうに言葉を詰まらせた。
「一緒にとろうか。部長と3人で。俺たちが取材しました、ってね」
「さ、三人。そ、そうね。三人で。うん。部長さんも写りたいもんね」
「まあ、写真とか大好きだろうよ」
部長はさっと部室に走り込んだ。
やはり写真は好きらしい。
「机を囲んで撮ろうよ。僕は座ってるから。二人は僕の秘書みたいな感じで隣に立って」
「怖くなかったですか? あたしだったら絶対我慢できない」
「怖くなかったよー。まあおばけは嫌いなんだけどね」
部長はにっこりと笑う。
――――。
俺は部長の隣、やや後ろに立った。
「よし、タイマーつけてっと」
ぴ、ぴ、と音がなる。
目をつぶってしまうのは恥ずかしい。
タイミングを計る。
「数馬くん」
小声で唯野は話しかけてくる。
「なんだ? いま忙しいんだが」
「秘密ですよ」
「なにが?」
唯野は俺の腕をぐいっと引っ張って、強く握った。
「二人だけの、秘密です」
写真にはきっと映らない。
部長の後ろで、腕は隠れてしまっている。
しかしよく見てみれば、きっとわかってしまうだろう。
それが新聞に載るのは、恥ずかしい。
すごく恥ずかしい。
「……」
そのまま写真を撮られるのは、なんだか負けな気がした。
なにか仕返しをしてやろう。
ぴぴ、ぴぴぴ。
もうすぐだ。
「蜜柑、言ってなかったんだが」
「……ん? ん!? いま名前でっ」
「数馬は俺の苗字だ」
「え?」
「ぴーす!」
部長の声に合わせて、俺は笑顔を作った。
どうだ。
これではこの写真はつかえないだろう。
蜜柑の間抜けな顔は、しっかりとまだ残っていた。




