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プレゼンスB  作者: 重山ローマ
なんでもするって言ったよね?
21/45

 

「ここで最後よ」


 俺たちが来ていたのは、元美術準備室。

 いまは、仮名なんでも部の部室だ。


「ん? ここは別に怖い場所じゃないだろ?」


「知らないの? この部室は昔からでるって噂なのよ。だから本当はここには来たくなかったんだけど。もう崖っぷちだったから」


「部長は知らなかったろうなあ」


 すぐ後ろでガクガク震えているから間違いない。


「知っていたらここは選ばないでしょうね。他にも結構、空いてる教室はあるもの」


 すごく後悔してるみたいだからそれ以上は言わないであげてくれ。


「ここの写真はどうする? 入り口から一枚でいいのか?」


「えっと、なんていうか……」


 唯野は言いにくそうに言葉を詰まらせた。


「一緒にとろうか。部長と3人で。俺たちが取材しました、ってね」


「さ、三人。そ、そうね。三人で。うん。部長さんも写りたいもんね」


「まあ、写真とか大好きだろうよ」


 部長はさっと部室に走り込んだ。


 やはり写真は好きらしい。


「机を囲んで撮ろうよ。僕は座ってるから。二人は僕の秘書みたいな感じで隣に立って」


「怖くなかったですか? あたしだったら絶対我慢できない」


「怖くなかったよー。まあおばけは嫌いなんだけどね」


 部長はにっこりと笑う。


 ――――。


 俺は部長の隣、やや後ろに立った。


「よし、タイマーつけてっと」


 ぴ、ぴ、と音がなる。

 目をつぶってしまうのは恥ずかしい。

 タイミングを計る。


「数馬くん」


 小声で唯野は話しかけてくる。


「なんだ? いま忙しいんだが」


「秘密ですよ」


「なにが?」


 唯野は俺の腕をぐいっと引っ張って、強く握った。


「二人だけの、秘密です」


 写真にはきっと映らない。

 部長の後ろで、腕は隠れてしまっている。

 しかしよく見てみれば、きっとわかってしまうだろう。

 それが新聞に載るのは、恥ずかしい。

 すごく恥ずかしい。


「……」


 そのまま写真を撮られるのは、なんだか負けな気がした。

 なにか仕返しをしてやろう。

 ぴぴ、ぴぴぴ。

 もうすぐだ。


「蜜柑、言ってなかったんだが」


「……ん? ん!? いま名前でっ」


数馬かずまは俺の苗字だ」


「え?」


「ぴーす!」


 部長の声に合わせて、俺は笑顔を作った。

 どうだ。

 これではこの写真はつかえないだろう。

 蜜柑の間抜けな顔は、しっかりとまだ残っていた。


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