表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プレゼンスB  作者: 重山ローマ
部長と俺と
2/45

 

「実は、今日はお客さんがくるのですが……」


「なんで? 生徒会にでも目をつけられたのか?」


 違う、と激しく首を振る。


「これ、見て! これこれ!」


「ああ、いつも持っている部活勧誘チラシな。それが……おい」


 『人には言えないお願い、なんでもやります! 絶対に話しません!』との文字を見つける。

 あまりいい言葉には思えないが。


「そもそも部活として認められてもいないのに、なにをするんだよ」


「部活として認められていないからこそ、なんでもできるんだよ。数馬はわかってないねえ。おバカさんだねえ」


「……」


 あらためてチラシに目を通す。

 手作りの、とても高校生が作ったものには思えない低レベルのチラシは、見るだけで人を不安にさせるクオリティになっている。


 これでは人が寄ってこないのも納得である。


「で、目的はなんなんだ?」


「それはね、人には言えない悩みを解決してあげた代わりに、部活に入ってもらおうという完璧な作戦が」


「入ってもらえないだろ」


 悩みを聞いてもらうのと、部活にはいるのとは全く話が違ってくる。


「人には言えない悩みをチラリ」


「最低だこいつ!」


 よくよく考えてみれば解決したあとなら意味がなさそうだが。


「そろそろ時間だ」


 部長は、部室の扉をじっと見つめて、だれかが入ってくるのを待つらしい。

 こいつの思惑がうまくいくとは到底おもえないが。


「いえ、すでにわたくしはここにいます」


「ひィ!」


「おわっ!」


 机の下からにょきっと頭を覗かせてそいつは現れた。

 どうやら依頼主は彼女のようだが。


 尖った目尻と、後ろで縛ったあまりに長い髪。

 見方によっては、


「蛇に似て……あ、いや、なんでもない」


「あら、わたくしの名前は蛇川ですよ」


「ヘビだァ!」


 ヘビではない。

 人間である。


「話はきかせてもらいました」


「あ、いや……なんのことかなぁ。こわいこわい、まるで的確に獲物を捕らえるヘビみたい……ヘビだァ!」


「落ち着け、部長。ただの人間だ」


 部長の思惑はすでに相手側に知れてしまったようだ。

 話を聞かせてもらうのはこちらであるはずなのに。


「まあ、なんだ。話を聞こうじゃないか。チラシなんかを見て相談に来るくらいなんだ。相当悩んでるんだろ。話しにくいところは濁していいから」


「そうですね。解決したあとの話は、その時でいいですから」


 やはりバッチリ聞かれているわけだが。


 そして、蛇川真白はゆっくりと口を開く。

 どうやらその悩みは、簡単に解決することはできなさそうだ。


「親友の婚約者を探して欲しい」


 無理だ。

 すぐにわかった。


 学生の悩みにはどうもおもえないが、彼女の顔は一貫して、真面目なようだった。

 手伝うと言ってしまった手前、そのまま返すわけにもいかない。


「その、なんだ……。親友には会えないのか?」


「そうだよね。数馬の言う通り、本人と話してみないことには……」


 まずはその親友にあってみることにする。


 と、そこまではよかったのだが。


「彼はわたくしの前じゃないと逃げちゃうの。あなたたちと会話ができるとは思えない」


 と、ポケットから小さな瓶を取り出して、ちょこんと机に置いた。


「ゲコ」


「カエルだァ!」


 それはなんというか、瓶に封じられた彼は、人間ではない。


「落ち着け部長。ただのカエルだ」


 簡単にはいかないというか、解決できるのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ