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ドテンプレ転生ファンタジー「死の先にて」  作者:
第一話「レフ・クジョーVS司祭イミテイター」
19/27

18:帝都近郊で古代魔神文明の遺跡が発掘される

 祭りが終われば日常が始まる。

 帝都では、大量のごみや露店の後片付けを行っていた。

 なにしろ郊外どころか城壁の外にまで多数の露店が立ち並んだのだ。

 中には持ち運んでも益にならなそうなものをそのまま捨てていく不心得者も出る。

 臨時の露店や小屋などは、その最たるものと言えるだろう。

 あるいは、そのまま帝都に住み着こうとする流民が出たりもする。

 そういったトラブルの解決が必要であったのだ。



 帝都の郊外を練り歩く二人組もそんな仕事にかりだされていた。


「……小屋を建てるだけ建ててトンズラした商人は出入り禁止にすべきだな。

 『組合』をバカにするにもほどがある」


 そんなボロ小屋の一つを手元の資料と見比べながら、一人が忌々し気にそう言った。

 茶色の髪を短く纏めた若い男性だ。

 動きやすそうな作業着と、腰にぶら下げた短刀が特徴的である。



 彼が言った『組合』というのは、帝国に存在する大規模な組織である。

 船乗りや旅芸人が各地の情報を交換するために集まったのが前身とされる。

 その互助団体に、古代魔神文明の技術を研究する魔術師たちが目を付けた。

 研究のために、各地の遺跡探索に必要な情報と人手を求めたのである。

 貴族でもあった魔術師たちは、引き換えとして知識や権力の後援を行った。

 これにより彼ら根無し草は自らの組織を通じて大商人と交渉する実力を得た。

 そして遺跡探索や人材育成の名目で様々な権利を勝ち取ったのである。


「移民を傘下に組み入れ、能力に応じて資格を、信頼性に応じてランクを認定する」

「未開の土地を調査し、発見した遺跡や相場の情報を一元管理する」

「都市における日雇い労働の情報を集め、傘下の人員に優先的に提供する」

「露天市場を監督し、商人から手数料を取る」


 例をあげればこのようなものだ。

 今では帝国各地の都市に住まう無産市民をほぼ管理する大組織である。

 権力を得るに合わせて名称も「港湾労働者組合」「探索者組合」などと変遷した。

 そしていつの間にかただ『組合』と呼ばれるようになり、現在に至る。



「だがその小屋のおかげで組合がわざわざ流民の借拠点を作る必要はなさそうだ」


 もう一人の人物が皮肉気にそう返答する。

 少し高めの声色から察するに、おそらくは女性であろうか。

 断言ができないのは、全身をゆったりとした暗色系の服で覆っているからだ。

 頭から顔にかけても布で包み、目の部分がかろうじて露出する程度である。

 ゆったりとしているため、体型もよくわからない。

 これは南方や東方にかけて広く見かける伝統衣装の形式である。

 強い直射日光や砂漠の砂、熱帯の虫害から身を守るのにちょうど良いという。

 組合の構成員には多様な地方の出身者や異種族が多い。

 組織の設立経緯や目的を考えると、むしろ当然と言えよう。


「仮設宿ならともかく、ただ屋根がついただけの露店に人なんぞ住まわせられるか。

 南方じゃあるまいし、冬の間に何人死ぬかわからん。

 さっさと叩き壊して適当な寝床に放り込まんと組合の看板に傷がつく」


 だから男の方もこのパートナーの服装に対し特に何と言うこともない。

 理由がなければ他人の風習にとやかく言わない。

 ましてや公共の場で侮蔑するなどもってのほか。

 組合における暗黙のマナーとでもいうものであった。


「相変わらずの組織人間だな貴様は。

 ――と、そうにらむな、ほめ言葉だほめ言葉。

 私をにらんでる暇があるならさっさと仕事を片付けよう。

 そのほうが組合の利になる、だろ?」


 そう言いながらも、二人は手際よく資料と現状を手際よく照合していった。



 そうやって帝都の郊外を調査することおよそ半日。

 二人は地面に空いた巨大な穴の前に立っていた。

 穴の直径はおおよそ10mと言った所だろうか。

 なんでも、大きなテントを立てようとして地面に杭を打ったら空いたという。

 地表近くに空洞があったところに、たまたま大きな衝撃を与えたのだろう

 だが、この穴はその「穴の先にある空洞」が非常に特殊であった。

 夕日に照らされてかすかに覗く、地下に作られたまっ平らな床。

 まったく継ぎ目のない石のようなものでできた柱。

 それが人工物、それも高度な技術で作られたものであることは明らかであった。


「……どう見る?」


 男が黒ずくめの人物に尋ねる。


「私の記憶が確かなら、十中八九は古代魔神文明時代のものだな。

 少なくともその影響を多分に受けた遺跡であることは間違いない。

 帝都は古くから文明の十字路として発展していたらしいからな。

 古代魔神文明の巨大な地下街があるはずだと常に言われ続けてはいたのだが……」


 黒ずくめの人物は、興味深げにしげしげと穴の先を見つめながらそう答える。

 穴の先はよく見えないが、少なくとも一日二日で調査が終わる広さではない。


「いずれにせよ、組合にこの件を報告する必要があるだろう。

 ――これからしばらく、忙しくなるぞ?

 ひょっとしたら、今の時代に遺跡探索ができるかもしれん」


 そして、歓喜を抑えきれないとばかりにそう付け加えた。



 かくして、帝都にて古代魔神文明の巨大な「地下街」が発見されたのである。




「第一話:レフ・クジョーVS司祭イミテイター」~完


「第二話:アタック・オブ・ザ・キラー幸子EX」へ続く

皆様の応援や評価のおかげで何とかここまで書きあげることができました。

本当にありがとうございます!

第二話は10/27(火)をめどに投稿予定です。

これからもどうぞレフともどもよろしくお願い申し上げます!

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