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やがてセンガ老人とギィ青年と門下生達は、車座になって地面に座り込み、道場の設計案について、あれこれ意見を交わし始めた。
「この近くに滝があるじゃろ、あれで水力発電をして、最初に電源を確保する。電気を豊富に使えれば、工事も捗るからのう」
「滝は修行に使うので、発電機を置かれると困るのですが」
熊の様な顔と図体をした筋肉ダルマの若者が、センガ老人の案に異議を唱える。
「発電機は滝に直接置かんよ。上流の脇からパイプを通して、そこを伝って水が下に落ちる所に繋げるんじゃ。滝を使うと言っても、高低差を利用するだけじゃからな。景観は少し損なうがの」
「ならば、問題ありません」
センガの返答に、熊は納得した。
「電気が使えればポンプも使える。じゃから一緒に水道も作ってしまおうと思う。滝の上流から引いた水を、ろ過と殺菌する設備を用意してな。ゆくゆくは浄化槽も設置して、下水道も作りたいんじゃが」
「かなり本格的だな、じいさん」
センガ達を道場まで案内して来た男が、驚き半分感心半分で言う。
「ああ、こんな山の中でも、かなり快適に暮らせる様にするつもりじゃ。道場兼ワシの隠居所としてな」
「隠居所って、入門したのはそれが狙いかよ」
「はっはっは、金を出すんじゃから、その位の特典はあってもいいじゃろ? ここは自然に囲まれていい所じゃし」
「なるほどな。ボケ老人どころか、こいつはとんだ策士だ。その年で武芸の修行なんて、変だと思ったぜ」
「じゃが、ずっと入り浸るつもりはないぞ。ヴォーンも今は気楽な独り者じゃが、やがて嫁さんでももらって家族が出来れば、ワシも遠慮せざるを得ん」
「あんな変人に、嫁が来るかねえ」
別の門下生が疑わしそうに言う。
「お前ら、ヴォーンが一応この国の英雄だって事を忘れてやせんか。その気になれば、各界の令嬢からいくらでも申し出が来るぞ。逆玉し放題じゃ。人の事より自分らの事を心配せい」
「言ったな、じじい。俺達は武芸一辺倒だからな。そんな浮わっついた事には興味ねえ」
「そう言う奴に限って、いざ自分が女に惚れると、パニックに陥ってどうしていいか分からなくなるもんじゃ。そう、特に、そこの熊。いかにも『自分は色恋などに興味はありません』みたいに澄ましてる奴が、一番危ない。今に見ておれ、ワシの言った通りになるから」
指差された熊を除いて、その場の皆が笑う。
「ご老人、おかしな言いがかりはやめてもらいたい」
熊は渋い表情になり、余計熊みたいな顔になった。
この予言は後に大当たりする事になるが、それはまた別の話。




