第肆幕 ―人と相性―
「何をしているアーク!作戦通り動け!」
「作戦通りにうごいてちゃ、相手に動きを読まれる!隙のない攻撃は次を読まれやすいんだよ」
「だからと言って勝手に動くな!」
「仕方ないだろ!予定と敵の数が違ったんだから!」
「はっ、くだらない言い訳だ」
「なんだと!おい、フィア、表へ出ろ」
「ああ、受けて立とう!」
フィアとアークの言い合いにサラは小さくため息をついた。
「もう外に出ているわよ。」
彼女がそう言い終えたときにはもうすでに二人とも剣を抜いて,本気で撃ち合いをしていた
これが最近の風景となりつつある。
ラメドの駐屯所にアークが来てから、彼の剣の腕によって戦闘は楽になった。
だが、精神的なところで正直つかれる……
最初に会ったときから、二人の仲は良くなかった―――いや、むしろ、悪かった。
当たり前と言えば、当たり前だ。
炎の民の血を引くアーク。氷の魔女の末裔フィアール。
相対するその血により、二人の相性は最悪だった。
それ以前にがむしゃらな熱血漢であるアークと、冷静なフィアールとでは、相性があまり良くないということは手に取るようにわかることで……
「……ところで、何でラウさんは大丈夫なんですか?」
サラの言葉にラウは簡潔に答えた
「炎の民の血を引いておるのはわしの妻。あいつの祖母じゃからな」
「ああ、なるほど」
……といった疑問が解けたところで二人の仲が良くなるわけではない。
とりあえず、フォンルはアークとそこまで仲が悪いわけではなかったが……―――彼はあまり先祖の血を濃く引いてはいないのだ―――
問題なのは、先祖返りというもので、氷の魔女の血を色濃く受け継いだフィアール。
サラがちらりと二人のほうを見ると炎と氷の力が互いにぶつかり合ってはきえて、水になり……を繰り返していた。
もう地面は雨上がりのようにぐしょぐしょだ。
「どうにかなりませんかね」
フィアールがはじいた火球をよけながらサラは言った。
「お互いがああじゃから無理じゃろうて」
今は耐えろと言いながら、ラウはアークのよけた氷の刃を避ける。
「下手をすれば基地が壊滅します!」
泣き舌交じりにフィアの氷の刃をとかしたり、アークの炎をけしたりしているフォンはある意味一番の被害者だろう。
その姿を見ていられないというように頭を抱えるレントも然り。
「なにか、いい方法はないのだろうか?」
レントの言葉にサラはちいさく「あ」とつぶやいた。
「そうだわ。あの手があった!」
いいことを思いついたというように、サラはフィアに言った。
「そんな事をしている暇があったら、セフィル君の相手してあげたら?」
その言葉にフィアはピクリと反応すると、小さくため息をついた。
「ああ、そういえば最近、かまってやれなかったな」
「あの子人見知りするから……あなたがいないと大体の人間にはまともに話もしてくれないのよ」
サラの言葉にフィアは頷くと、さっさとどこかへ立ち去って行った。
「……なんだ?」
首を傾げるアークに説明をしてくれたのはフォンだ。
「アークはまだ知らないんだね」
「?」
「兄さんは数カ月前にある子を拾って、今まで面倒をみているんだ」
「……ある子」
「本名はわからない。 記憶喪失みたいだからね」
「き、記憶喪失?」
アークは眼を見開いた
そんなアークに苦笑しながらフォンは頷く
「なんでも、戦争のショックで記憶をなくしたみたいなんだ。どこで生まれ育ったのかも、自分が何者なのかも覚えていない。そんな彼を兄さんは放っておけなかったみたいで、ああやって今まで面倒をみているんだ」
「……軍の人間が?」
「忙しいときは、別の人が面倒みているし、なかなかしっかりした子で、負傷者の手当てや食料の確保なんかを良く手伝っている」
人見知りをするのが玉にきずだけど
そう言ってフォンは笑った。
「……根っからの仕事人間と思っていたけど、案外人らしいんだな」
アークの言葉にフォンは苦笑した