第参幕 ―フィアール―
アークは祖父に言われて少し広い部屋へと案内された。
玲はどうしようか?
祖父は自由にしていいといったので、アークは玲に声をかけたが、彼女は
「いかない」
そうきっぱりと言った。
どうやら、彼女は部屋を出たくないらしい。
あんな様子で玲は大丈夫なのだろうかと考えたが、本人からしてみれば大きなお世話だろう。
それともう一つ。
廊下であった彼のこともアークには悩みの種だ。
「ラウ殿、その人は?」
祖父の後をついて言っていると一人の男に声をかけられた。
銀髪に赤い瞳を持った長身の青年だ
「おお、フィアか。こいつは先日話しておったわしの孫じゃ」
祖父―――ラウは簡単にアークの紹介をフィアと呼んだ男にした
「ああ、君が……。 私はフィアール=リクロードだ。 精々死なないようにがんばってくれ」
それだけ言うと、フィアールはさっさとどこかへ行ってしまった
「やっぱり、まずかったかのう……」
小さくラウは呟いたが、アークに聞こえてはいなかった。
初対面で最悪な印象を持った男―――フィアールをじっと睨んでいたからだ。
ここにいるのがラメドのメンバーじゃ
ラウはアークに数枚の顔写真を見せた。
「こ奴はフォンル=リクロード。さっき廊下ですれ違った男―――フィアの弟じゃ」
「ふんふん」
「いかつい男がジーモン=ベッカート、この女はサラ=フロン、そして釣り目の男はレント=サフィラン、軽そうな奴はクルト=ファヴァレットじゃ」
「い、一日で覚えるのか?」
アークは彼らの大まかな特徴を書いた紙を見ながらラウに聞いた。
「そうじゃ。ラメドはわしも含めてたった7人。 そうむずかしいことではあるまい」
「げえーーー」
嫌そうにアークは呟いた。
だが、まあ仕方がない。
味方の顔を覚えて戦闘で不利になることはないだろう。
「まあ、覚えるしかないか~」
紙と写真を部屋に持って行ってアークはそれをずっと眺めていた。
「なにそれ?」
「ラメドのメンバー」
「面白いの?」
「これくらい覚えていなくちゃここじゃやっていけないんだよ」
「ふーん」
玲は興味なさそうに呟いた。
その間、彼女は自分の荷物の中から一冊の本を取り出した。
題名は……
『Utopia』
それを見てアークは玲に聞いた
「なにそれ?」
「本」
「面白いの?」
「全然」
言ってから玲は本を投げてよこした。
その本は古代語で書かれていた。
「えーと何々? “壱百の宝玉……楽園”??」
「へえ、アンタ古代語が読めるんだ」
「少しならね。 でもよくわからない。 ……ところで壱百の宝玉って何?」
「これよ」
玲は胸元から一つのペンダントを取り出した。
「ふつうは武器につけられている宝石。 人の魔力を高めてくれるものよ」
「……なんでそれと楽園が関係あるんだ?」
「楽園とは創造の力。 神の力のこと。 数年前までこれを奪い合っている奴らがいたみたいだけど、反逆軍があちこち荒らしまわったせいで、宝玉の情報もかなり消失しちゃったみたい。 私だって、本物はこれ以外見たことないもの」
そう言って玲は苦笑した。