第壱幕―少女との出会い―
アークは生まれてはじめてきた帝都に驚きを隠せなかった。
「へぇ~、ここが帝都か……」
きょろきょろとあたりを見回していると一人の少女がアークにぶつかった
「ご、ごめんなさい!」
フードを目深にかぶった少女はあわててアークに謝ると、サッと走って行った。
「なんだったんだ一体?」
少女の走っていった方向を見ると、後ろから複数の人間が走ってくる音がした。
「あいつ、一体どこに行きやがった!」
「所詮子供の足、そう遠くへは行かないだろ」
「だが,すばしっこいガキだからな、どこへ行ったかわからねぇ。」
「一応ここいらをもう一度探すぞ!」
野太い男たちがアークのそばを通り抜け、走っていった。
「何なんだ? 一体??」
どうやら、あの少女を追っているらしかった。
あの男たちの様子からすると、少女が何かをして彼らを怒らせたらしいが……。
「物騒な世の中だし、すりか何かかな?」
だが、さっき少女とぶつかった自分は何も取られていない。
「なんだろうな~、ねえ、君は解る?」
アークは数歩歩いた先の路地裏の気配へと話しかけた
『……!』
「あいつらは、うまくまいたみたいだけど、俺、君が回り道してここに戻って、そこに隠れるのを見ちゃったんだよね。」
『………』
「怖いことはしないからさ。何か話してくれない?」
『……』
しばらく2人の間に沈黙が流れた。
「本当に、何もしないよね?」
おずおずといった様子で少女は姿を現した。
相変わらず、黒いマントのフードはかぶったまま。顔が見えない。
背はアークより頭一つ分低く、マントの端から見える手足は驚くほど白かった
「君、一体なんでそんな風に顔を隠しているの?」
「それは……」
「……?」
「………か、顔に醜いやけどを負って、それで……」
さっと、少女は視線をそらした。
どうやら嘘をついているらしいが、アークは気にせず、次の質問を言った
「何で追いかけられていたの?」
「……」
「何か悪いことでも、した?」
「していないわ!」
少女はきっぱりといった。
「ただ、私は買い物をしに帝都に来ただけで」
「そう。」
さてどうするべきか……。
このまま少女を解放したところで何か解決するわけではない。
それ以前にアークはこの少女に興味を持っていた
(でも、どうしようかなぁ~)
天を仰ぎ考えたそのとき。
「アーク!」
自分の名を呼ばれ、そちらを振り向くとそこには
「じいちゃん! ……どうしてここに?」
「どうしても何も、お前がいつまでたっても待ち合わせの場所に現れんから探しに来たんじゃい!」
「あ~、ごめん」
「ほれ、いくぞ!」
アークの祖父はアークの耳を引っ張り無理やり連れて行こうとした
「いでででで! ちょっとまって!」
「なんじゃ!」
祖父の言葉にアークは無言で少女を指差した。
「あの子は?」
「俺のツレ」
「どういうことじゃ?」
祖父の言葉に、アークは笑顔で答えた。
「旅人みたいでさ。 道中危険だろうからって一緒に来たんだ」
「ほう。 それでどうするつもりだ?」
「腕には自信があるみたいだし、城のほうで置いてくれないかな?」
その言葉に祖父ははあと大きなため息をついた
「お前といい、あいつといい……帝都の軍は託児所じゃない」
「……は?」
「まあ、いい。 とりあえずついてこい」
「?……うん」
アークは少女の手を引くと祖父の後について行った。