第玖幕―再開―
「琳」
玲はセフィルの姿を見て呆然とつぶやいた
「あなた、生きていたのね」
涙を流し、彼の体を強く抱きしめる。
―――ダレ?アナタハダレ?オモイダセナイ
どこか懐かしい彼女にセフィルは聞く
「あなたは、誰?」
その言葉に玲は目を見開いて、泣きそうな顔で言った。
「あなた、私がだれかわからないの!?」
このかお、みたことがある。
そう思ったが、思い出せない。
思い出すなと自分の中の誰かが言う。
瞬間、セフィルの意識は闇に落ちた。
「一体どういうことだ?」
セフィルの体が地面に着く前に支えたフィアールは玲に問う。
「それはこっちのセリフよ。どうしてこの子がここに……」
そう言ってうつむく玲。
一人、アークは訳が分からなくなっていた。
「一体どういうことだよ」
「セフィ君は、記憶喪失なのよ」
サラの言葉にアークと玲は同時に彼を見る。
「だから、私に“ダレ”なんて言ったんだ」
その表情は悲しげではありながらどこかほっとしているようだ。まるで、自分は彼から拒絶されたのではないということが分かったかのように。
「……なあ、玲は一体こいつとどういう関係なんだ?」
アークの言葉に玲はセフィルから目を離さずに言った
「弟よ」
「弟?」
玲は頷く
たしかに、よく似ている
アーク以外の二人も玲の姿をじっと見つめる。
「……でも、まずは、私たちの過去を話したほうがいいのかな?」
彼女の言葉に三人は頷く。
「ああ、私もこの子がいったい何者なのか……気になっていたからな」
フィアールの言葉に玲はゆっくり話した。
玲と琳の姉弟は、とある隠れ里に住んでいた。
だが、そこが欲深い人間たちに見つかると、彼らは隠れ里に住む種族―――コフを利用しようとした。
だが、元来争いを好まないコフは首を縦に振らなかった。
怒った人間は隠れ里に火をつけたのだそうだ。
「その後、私たちはある男に拾われました」
「ある男?」
アークが首をかしげると、玲はしばらくためらってから口を開いた。
「この戦いの首謀者。クリフトル」
その言葉に周りが驚いた。
曰く、クリフトルは優しい様子で二人に近づいたのだという。だが、玲は彼にほんの少々疑問を抱いていた。それが何かは本人も理解できなかったが、何かがおかしいと思ったのだ。
その疑問が大きくなるにつれ、玲は彼の元に居にくくなった。
「そして、私は彼の元を離れたの」
玲は話す
「それで、後悔はしていないわ。私たちが敵だと……絶対の悪だと思っていた人たちも、自分とあまり変わらない存在だということが分かったから」
そう言って玲は周りを安心させるように微笑んだ……が、すぐに暗い顔になった
「でも、私が彼の元を離れて間もなく、琳の居場所が分からなくなった。風の噂では、人間に殺されたと……そう聞いていた。 でも、私はそれが信じられなくて……琳の手がかりを探したの。」
「そして、私が保護していた彼と再会した……というわけか?」
フィアの言葉に玲は頷いた。
「あなたには感謝しています、琳を……弟を助けてくれてありがとう。」
その言葉にフィアは柔らかく微笑んだ。
つられてアークも心の中が暖かな気持ちで満たされた。