3 休み時間
一時間目が終わり、休み時間となった。
「あー、やっと終わった」
智也は席を立ち、教室を出ようとした。
「ちょっと待ちなさい」
その時、智也の制服の首根っこを誰かがつかんだ。
「何すんだよ」
智也は振り向いた。「げっ、喜美子」
「あれほど言ったのにまた遅刻したわね。あんたのせいで恥かいたでしょ」
ちょっと気の強そうな感じの女子生徒が智也に言った。智也の双子の姉、喜美子である。喜美子は面長で目の大きいボブカットの少女である。身長は一七〇センチ近くと高い方である。ちなみに智也は一八〇センチである。
「俺が遅刻しようとしまいと俺の勝手だろ」
「勝手じゃないわよ。あたしはあんたのこれでも双子の姉さんなんだからね。あんたが悪いことするたびに、そのしわ寄せがあたしに行くの」
「何で同じクラスに双子の姉がいるんだよ、絶対間違ってる」
「やかましい。今日はあたしがたっぷりお説教してあげるわ」
喜美子は智也を自分の席まで引きずっていく。
「冗談だろ。俺は昼休みにも上原の奴に説教喰らうんだぞ」
「その次はお父さんよ」
「おい、そりゃねえよ」
「喜美ちゃん、先生が呼んでるわよ」
女子生徒が喜美子に声をかけた。
「え、あたし?もう」
喜美子は智也から手を離した。
「やった」
「智也、次の時間は逃がさないからね」
喜美子はそう言うと、教室を出ていった。
「うるせえ、姉貴」
自分の席に戻った智也は恨めしそうに呟いた。
「さすがにおまえも姉貴にはかなわねえな」
智也の前の席に白川が座った。白川は智也の中学時代からの親友である。
「喜美子は昔から親父に柔道習ってたからな。今や三段だぜ。力じゃかなわねえよ」
「おまえの親父さん、警視庁の刑事なんだよな」
「変に正義感の強いところは親父そっくりだ」
智也がため息をついて、言った。
「おまえとは正反対だな」
「ほっとけ」
智也はふてくされたように言った。
「久坂君」
その時、教室の入口で声がした。
智也が声の方を見ると、裕美が戸を開けて、立っていた。
「おい、誰だよ、あの子」
白川が驚いた様子で言った。
「転校生だよ」
智也が席を立ち、裕美の方へ歩いていった。
「さっきはありがとう」
「いや、おやすいご用だ」
裕美の素直さに智也は照れてしまった。
「ヒュー、ヒュー」
まわりの男子生徒がはやし立てる。
「うるせぇっ!」
智也が一喝した。
「クラスはどこになったの?」
「二年A組。今日は手続きだけだから、このまま帰るんですけど、その前に学校の中を久坂君に案内してもらえたらと思って。駄目ならいいんですけど」
「あっ、いいぜ。時間もったいないから、行こう」
智也が裕美の背中を押して、教室へ出ようとした。
「智也、逃げるなんて甘いわよ」
智也の前にまたしても喜美子が立ちはだかった。
「先生に呼ばれたんじゃねえのかよ」
「もう用は済んだの、残念だったわね」
「転校生に学校の中を案内するぐらいいいだろう」
「転校生?」
喜美子が裕美を見た。
「日高裕美です」
「あたしはこいつの姉、久坂喜美子。悪いけど、こいつには用があるの。他の人に頼んでもらえる?」
「じゃあ、俺が」
白川が立候補した。
「待て、俺だ」
他の男子も割って入る。
「お姉さんも一緒でいいですよ」
「え?」
「喜美子、生徒会長だろ。困ってる生徒を見捨てるのか」
「……わかったわよ。じゃあ、行きましょう」
喜美子は渋い顔で言った。




