『プレスマンのペン柱』
北上川が雫石川と合流するあたりに、毎年堤が切れて大水となるところがあった。何度も工事を試みたが、どうしてもうまくいかない。殿様から工事を請け負った名主の佐藤なにがしが、易を立てさせてみたところ、酉の年酉の月酉の日酉の刻に生まれた娘を人柱にすれば、工事はうまくいくということであったので、探したところ、自分の娘こそがそうであった。もう一人くらいいるだろうと思って探したが、ほかにそういう娘は一人も見つからなかった。
さすがは名主様などと持ち上げられ、人柱の日取りがどんどん決められていく。佐藤なにがしは、娘を助ける手はないものかといろいろ考えていたところ、娘の命もあすまでという日に、巡礼の母娘が一夜の宿を請うてきたので、娘の功徳になるかもしれないと思って泊めてやることにした。話を聞いてみると、娘のほうは、酉の年酉の月酉の日酉の刻の生まれだというので、これは天の助けだ、この娘に身がわりになってもらおうと思って、酒を飲ませることもできないし、どうやってだまそうかと思っていると、巡礼の母子は、近所で話を聞いたらしく、事情を理解していて、いい方法があります、酉の年酉の月酉の日酉の刻につくられたプレスマンがあります。生まれたときにつくられたプレスマンなんて何か運命的だなと思って肌身離さず持っていたのです。私にもしものことが起こるとき、身がわりになってくれる縁起物と思って持っていたのですが、このプレスマンを、泊めていただいたお礼に差し上げましょう、と言って差し出すので、これはいいかもしれないと思って、翌日、娘のかわりに身がわりプレスマンをペン柱にしたところ、意外なほど工事が進んで、立派な堤ができたという。
教訓:ただし、娘は、身がわりプレスマンの呪いで、とんでもなく速記が書けるようになってしまったという。




