87.
虚構の崩壊は、誰の目にも明らかな異常である。それはつまり、虚構内の神継ぎたちが動き出すと同時、外の世界の人間もそれに対処すべく動き出せることに繋がるのである。
どこかで、女性が一人の臣下から報告を受け、そっと口の端を持ち上げた。
どこかで、少年が青年に看取られた。
どこかで、少女が男性に促されて虚構の権能を発動させた。
そうして新たに構築された虚構は、瞬く間に夢から醒めたばかりの神継ぎたちと大勢の一般人を閉じ込めた。ただ、三人の神継ぎだけを拒絶して。
そして、間髪を入れずに新たな虚構に雪崩れ込んでくるのは、溢れかえるほどの異形たち。
どこかで、少女が大切な思い出を抱えながら、崩れ去った虚構が再び構築される様を、そしてこの地に降り立って世界を蹂躙し始める異形たちを、その惨状を、青年とともにただ見上げていた。
一般人は異形相手ではまともに戦えない。
さらに、ミスラの契約に縛られずに神権が扱えるのは元悪魔憑きの三人のみである。それ以外の神継ぎは、国家が神権の行使を望んでいない以上、純粋な武力で異形の大群を捌かなければならない。
それぞれの獲物を手に、彼らは異形たちの排除を最優先事項と定め、静かに押し寄せてくる異形たちを見据えた。
そして彼らが勇ましく戦っているさなか、この世界の片隅で、一人の神継ぎの心音が、緩やかに失われていった。




