第6話母親の愛情
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授業の終わりを告げるチャイムが、校内に余韻を残して響いた。
だが一橋陽翔にとってそれは、これから訪れる“何か”への予告に聞こえてしまう。
「陽翔!今日は先に帰らせてもらうわ!準備するものあんだよ!」
一虎がそう言いながら鞄を肩に掛けると、陽翔は慌てて声を返した。
「あ、いや。……今日ちょっと体調悪くて、家に来るの無理かも。」
「は?」
一虎がぐいっと顔を近づける。
そしてお互いの額をぴたりと合わせた。
教室の空気がわずかにざわつく。帰り支度をするクラスメイトの中から、ちらちらと視線が刺さった。
「うん!平熱だな!大丈夫だ!」
(いやいやいや!!女子の視線ッ!!何してくれてんの!?
彼女とか夫婦とか!そういうのでやれーっ!!)
その出来事は、数日間クラスの噂話の肴になったという。
⸻
帰り支度を終え、母へ友達が来ることを連絡すると、陽翔は早足で家へと帰った。
「ただいま—」
玄関をくぐった瞬間、甘いバターの香りがふわりと鼻をくすぐる。
その匂いに誘われるように、足は自然とキッチンへ向かった。
「母さん、何か作ってるの?」
「ああ!陽翔おかえりなさい!お友達が来るんでしょ?初めて陽翔が、お家に友達を連れて来るんだからしっかりおもてなししないとね。」
(あぁ、確実に当時の自分ならこんな思いを抱く事は無かっただろうな……)
思春期とは第二次反抗期とも呼ばれてる。
主に身体、精神、心理、社会的に様々な変化が生じる、当時の自分は社会的思春期を送っていた。親への反抗的な言動や態度は勿論、学校の行事ごとへも来る度、目を背けて過ごしていた。
しかし……大人になって上京して、親の有難みを感じたのだ。なんせ実家にいた時は起きる所から親頼み。そして起こさなかったりした時は八つ当たりをし、毎日の衣食住は当たり前だと思い込み、その甘えの積み重ねがあの頃の自分を苦しめた……そして、仕事の激務を理由に実家にもろくに帰らず……母の死に目にも会えずに亡くなった。
だから今、こうして母親の一つ一つの慈愛の優しい愛情と親の偉大さが身にしみて琴線に触れる。
「あれ?陽翔どうしたの?急に泣いちゃって」
「……母さん……俺を、ここまで大っきく育ててくれて愛情を注いでくれて本当にありがとう。」
何でか涙が自然と身体の奥底から溢れて来てしまった。しかしこれはあの日の後悔や未練の涙とは明らかに違った。
「何よ、急に!もうすぐ出来るから、お友達を迎える準備をしなさい……」
「うん。わかった」
(陽翔……ありがとう)
「なんか言った?」
(最後なんか言った様な)
「ううん、早く行きなさい。」
そのときスマホが震えた。一虎からだ。
《今から行く。》
余白が続きスクロールして見ると。
《ここまで見たな!陽翔のえっち!》
感動返せや。
もちろん既読無視。
⸻
部屋を片付け、弟に声をかけていると、インターホンが鳴った。
階段を駆け下り、深呼吸ひとつ。
そっとドアを開ける。
そこには佐藤紫帆が立っていた。
一虎よりも、まずそちらに目が行ってしまう。
さらに、彼女は丁寧に手土産を差し出した。
「初めまして、佐藤紫帆と申します。本日は急に押しかけてしまい、すみません。よろしければ、ご家族皆さんでどうぞ。」
母は、一瞬言葉を失った。
紫帆の姿勢は、あまりに綺麗だった。
(しかも、今話題のラスク……母さん絶対好きなやつ……)
「まぁ!わざわざ……ありがとう!」
その横で、一虎は胸を張る。
「よし!じゃあ応援歌の楽器練習始めるか!」
と豪語しながら、鞄から取り出したのは——トランプ。
「……楽器は?」
皆が陽翔を見る。
そう。陽翔だけが勘違いしていた。
そして。
「せーのっ!!誕生日おめでとーー!!」
パンッ!パンッ!パンッ!
クラッカーが弾け、笑顔が弾ける。
「おめでとう!陽翔!」
「おめでとうございます!」
陽翔は言葉を失いながら、ぽつりと呟いた。
「あの……俺、誕生日来月なんだけど。」
部屋が静まる。
全員の視線が、一虎に、集まる。
「ははははっ!!まぁ、前祝いってことで!ほらほら!お菓子並べるぞー!!」
呆れ半分、笑い半分。
摩訶不思議な誕生日(仮)パーティーが幕を開けた。
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