第4話紫帆と沙織後編
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午前6時52分。
グラウンドでは朝練の準備をする生徒たちの声が、かすかに風に運ばれていた。
けれど校舎の中はまだ、夜の余韻を引きずっている。
薄暗い廊下に、私の足音だけが音を響かせる。
沙織も、私も部活には入っていない。
こんな時間にここに来る理由なんか、本当はどこにもなかった。
だけど嫌な予感がした。
ここで来ないと一生後悔しそうなきがした。
いつもより空気が重い、そっと震える手で教室の扉に手をかけ開いた。
扉を開けた瞬間、冷たい風が頬を刺す。
開け放たれた窓からカーテンがやわらかく揺れていて——
その前に、沙織がいた。
「……沙織」
胸の奥が一気に熱くなる。
喉の奥から、勝手に声と涙が込み上げていた。
「昨日は……ごめん。沙織の事情も聞かないで、勝手なことばっか言って」
涙が落ちる音が床に染みていく。
そのとき、沙織がゆっくりとこちらを向いた。
——その顔を見た瞬間、息が止まった。
目の前にいてくれたことに安堵した自分と、
その表情から何ひとつ感情が読み取れないことへの恐怖が、胸の中で綺麗に交差した。
「沙織……?」
次の瞬間には、私はもう走り出していた。
自分でも止められなかった。
抱きしめた身体は、驚くほど軽かった。
今にも崩れそうなほど弱くて、儚くて、
まるで、触れただけで消えてしまいそうだった。
「大丈夫……大丈夫だよ。私が沙織のこと守るから。だから——」
涙で滲む視界の中、沙織の小さな手が頬に触れた。
そっと、涙をぬぐうように。
「紫帆。今日は、紫帆に伝えたいことがあって来たの」
真っ直ぐだった。
声も、目も、気持ちも。
その真剣さに、鳥肌が背筋を駆け上がる。
「これ以上、私に関わらないで」
息が止まった。
「家に勝手に来るのも、自己満足のお節介も、もうやめて」
言葉は刃物より鋭かった。
心に直接突き刺して、容赦なく抉った。
「中学のこと、気にしてるの知ってる。でも——その罪悪感も、今日で終わりにして」
「ま、待って……どうして……? 私、そんなつもり——」
膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。
沙織は、そんな私を見つめても、なにも変わらなかった。
まるで、ただすれ違った他人みたいに。
ずっと親友だと思ってた。
大人になっても、おばあちゃんになっても、ずっとだと信じていたのに。
「沙織!!」
背中に声をぶつけるように、叫んだ。
「ねぇ、一つだけ聞かせて……今、笑えてるの? 幸せなの?」
少しだけ振り返って、沙織は淡々と答えた。
「……しあわせだよ。だって、私には——」
その言葉の続きを、私は最後まで聞けなかった。
その日から、沙織は学校に来なくなった。
⸻
数ヶ月後
私は春から、福岡の高校へ転校することになった。
冬休みの間だけ北海道に残りたいと頼み、今は一人で家にいる。
静かにすればするほど、沙織のことばかり考える。
恋煩いみたいに、息をするだけで胸が痛くて、
食欲は消え、体重は五キロ落ちた。
ぼんやり時計の秒針を追っていると、インターホンが鳴った。
(……沙織!?)
階段を駆け下りようとして、足がもつれた。
ほとんど食べていない身体は、簡単に崩れる。
痛みも、何も、感じない。
玄関の向こうにいる人のこと以外は。
扉を開ける。
「沙……織、のお母さん……?」
「大丈夫? さっきすごい音したけど」
「大丈夫です。それより……沙織は、元気ですか」
私の問いに、少しの間が空いた。
「沙織ね、今九州に行ってるの。……てっきり紫帆ちゃんに会いに行ったと思ってたんだけどねー。」
心臓が、深く沈む音がした。
(許せない。悔しい。なんで。どうして。)
私たちのすべてより、
短く出会った誰かの方が、大事だったなんて。
——その日、私は決めた。
沙織を取り戻す。
そのために、彼を探す。
それ以外に、残されたものなんてなかったから。
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