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第4話 朝ごはんと爆発予告

「颯太様起きてください。もう朝ですよ。学校に遅刻しますよ」

 眠気眼を擦りながら、俺は寝ぼけ声で返事をした。

「わかってるよ。あと五分だけだから……」

「ダメです。ほら、早く起きてください」

 未来から来たアンドロイド美少女に起こされる朝。

……我ながらとんでもない状況だと思う。

 セリアの特徴的な銀色の髪が朝日に輝いて、マジで天使みたいに見える。昨日ドローンに変化させたヘアピンは「カランコエ」という花のデザインらしく、左側の頭部にちょこんと付いていた。

 それにしても、このアンドロイド、見た目が完璧すぎる。肌の質感、声のトーン、瞬きの頻度まで、どこから見ても人間の女の子そのものだ。

「颯太様、お起きください」

 セリアが強引に俺を抱き起こし、布団から引きずり出した。

――うわっ!

 彼女の顔が自分の顔のすぐ近くに来て、俺は一瞬ドキリとした。慌てて顔を逸らして事なきを得る。

 ダイニングチェアーに座ると、テーブルには既に朝食が用意されていた。

「朝ごはんです。昨日はありがとうございました」

「平日に朝ごはんは久々に食べるな」

「いつも食べずに学校へ行っていたんですか?」

 セリアが心配そうに眉をひそめる。

「うん。朝は時間ないからさ」

「いけませんよ!」

 セリアが手を腰に当てて怒った顔をする。なんかお母さんみたいだ。

「朝ごはんは一日の最初の食事ですから、栄養を体に送らないと頭が働きにくくなりますよ」

「ごめんごめん。いただきまーす」

 朝食の内容は白米、目玉焼き、ベーコン、味噌汁。一般的な家庭の朝食と大差ないけど、俺にとっては久しぶりに食べる家庭の味だった。

「ごちそうさまでした。美味しかった。セリア、ありがとう」

「どういたしまして」

 セリアがにっこりと微笑む。この笑顔、反則級に可愛いんだけど。

「これから毎日、栄養バランスを考えた朝食を作りますので、しっかりと食べてくださいね」

「わかったよ。ありがとうね」

 お節介とも取れるセリアの言動だったが、不思議と嬉しく思っていた。彼女が自分の健康を気遣ってくれているということが、言葉の端々から伝わってきたから。

 朝の支度を済ませた俺は、ふと思い出した。

 昨日セリアが言っていた「理科室での爆発」のこと。

 平凡を守りたい俺の中には、どこか期待と恐怖が入り混じったような不思議な感情が湧いていた。

「そういえば、今日、理科室で爆発が起きるんだよな?」

 俺の質問に、セリアは真剣な表情で頷いた。

「はい。ただ、怪我人はいませんので、その点はご安心ください。でも、颯太様は……」

「俺はなに?」

「できるだけ理科室には近づかないほうがいいです」

 セリアの表情が急に暗くなる。

「未来では颯太様が事故に遭うことになっていますから、その前兆かもしれません」

 俺は眉をひそめた。未来で事故? 昨日の混乱で、すっかりそのことを真剣に考えるのを忘れていた。

「わかった。今日は理科室に近づかないようにする」

「それと、今日の爆発が起きるのは昼休みの時間です。その時間は校庭にいてください」

「了解」

 なんとなく気が重くなったが、それでも俺はセリアの言葉を信じることにした。

「それじゃあ行ってきまーす」

「行ってらっしゃいませ、颯太様」

 誰かに「行ってきます」と言ったことも、誰かに「行ってらっしゃい」と言われたことも、随分と久しぶりだった。

 俺はいつもより晴れやかな気分で家を出ることができた。


---


 玄関が閉まり、家に一人残されたセリアは、朝食を終えた食器を洗おうと思い、台所に向かった。

「……食器の洗い方がわかりませんね」

 セリアがぽつりとつぶやく。

「まぁ調べながらやってみましょう。スポンジに食器用洗剤をつけてお皿を洗うと……一つずつするのは面倒ですが、そこまで苦ではありませんね」

 ブツブツと独り言をつぶやきながら、セリアは家の家事を完璧に終わらせていった。

「最後にお掃除ですね。掃除機のスタートボタンを押したら電源が……あれ? つかないですね」

 セリアが首をかしげる。

「故障でしょうか? 困りましたね……」

 そして、にっこりと笑顔になった。

「そうですよ! 私が直して使えばいいんですよ!」

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